これは2021年アドベントカレンダー「提供」 第5日目の記事です。
前回は、PCOSがあって挙児希望には差し障るが、労働の観点から見たら得をしていたのかもな 、という話をしました*1 。
今日は、前回事でも少し出た、月経随伴症状調査の話をします。
月経随伴症状調査、その前にあらすじ
私は、黄体ホルモンを補充している間*2 、出現する症状に困っていた。それはPMS の症状と被るところもあった*3 。私は黄体ホルモン補充に伴う症状に対処したいがため、PMS に対しての対処方法を探すことにした。PMS ならば先行研究もたくさんあるだろう。
調査結果
非公開ブログから転載します。その前に補足説明。
「月経随伴症状」とは、月経前・月経中に生じる症状のこと
「月経随伴症状」に関する論文を、心理社会的側面に着目して検索*4
なお、システマ ティックレビューみたいにちゃんと調べたわけではない。あしからず*5 。
自分用の記事だったため、ちょっとわかりにくいかもしれない。読み飛ばしていただいても大丈夫です。
【転載ここから】
困ったなあ。
今回、子ができなかったら、またこれをやるわけで、すると【黄体ホルモン補充薬】の2週間と生理の1週間で、4週間中3週間は具合が悪いことになる。仕事が……仕事ができない……。
困ったので文献を当たってみたところ、月経随伴症状の改善には、(あ、これは心理社会的側面ばかりに着目した文献ばかりである。そのため、肉体症状の改善とかの話は出てこない)
SOC(処理可能感、把握可能感、有意味感)
マインドフルネス
価値判断をしない態度(だめだと決めつけない?)
意識的に行動を起こす態度(何とかするという行動?)
運動*6
月経を前向きにとらえる
同性友人の情緒的サポート
こんな感じかなあ。最後のはきついねえ。今は*7 。
月経随伴症状に関する心理学的研究の概観と今後の展望(2018)https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/records/51294#/.YIqddCVUuEd
前略)単に今この瞬間に自分の身に起きている事象への気づきを高めるだけではなく、価値判断をしない態度、そして意識的に行動を起こす態度を身につけることが、症状の軽減には重要であることが考えられる。
月経随伴症状の安定のためには、生理現象である月経と共存するという消極的な思想だけでなく、女性の健康維持において有意義な特性であるという積極的な認識を持つことの必要性がうかがえる*8
女子大学生の月経に関する身体的精神的ストレイン に関する要因 -精神的健康を規定する要因の検討を中心に-(2014)
長崎大学学術研究成果リポジトリ
すなわち,月経に伴い起こりうる事象にとらわれることなく,「なんとかやっていける(処理可能感)」「月経症状がどのような経過をたどるかある程度予測している(把握可能感)」「月経という現象がある自分の人生に意味を見出している(有意味感)」といった感覚が形成されるほど,精神的健康が良好になるというプロセスが推測された
大学生の月経前症候群 (PMS )と日常生活習慣及びセルフケア実態(2012)
九州看護福祉大学学術機関リポジトリ
(抄録)『日常生活習慣の「運動」、「朝食の摂取」、「良好な睡眠」、「気分転換」は、PMS 精神症状と有意な関連がみられた為、日常生活でのこの点での配慮がPMS 精神症状軽減に有用であることが示唆された。』
女子学生の月経の経験 : 第2報 月経の経験の関連要因
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspog/8/1/8_KJ00000791419/_pdf/-char/ja
楽観性が高い者,自尊感情 が高い者は月経痛が低い.楽観性が高いことが月経痛を低く認識するように作用していたとも考えられる.また楽観性や自尊感情 は直接月経痛にも影響しているが月経観にも影響を与えており,月経痛に直接関連するというより,低い楽観性や自尊感情 により月経観が否定的になり,月経痛を強く認識する結果になったと考えられる。
こんなところです。うー。
【転載ここまで】
文献調査から思ったこと
もう忘れちゃったけど、書いておかないと記事としては不親切ですね。
もともと「SOC」の概念は知っていたので*9 、私は「把握可能感」を上げようとした……んだと思う。
何せ、年に3回とかしか生理がないので、PMS の感じがよくわからない。わからない、というのは精神衛生上よくない(SOCの把握可能感が低い)。そこで、黄体ホルモン補充中の不調をしばらく記録しておき、自分の心身にどんな変化が生じるのかを知ろうとしたのであった。
月経随伴症状調査フォームの作成
上記記事を書いた後、月経随伴症状調査フォームを作った。
これは、既存の、月経随伴症状の負担感を量的に(数字で)把握するために作られた尺度(セットになったいくつかの質問)から作った。制作の細かい話は後に記載するが、さしあたり、全体のスクショを載せる。
月経随伴症状調査フォーム_1
月経随伴症状調査フォーム_2
月経随伴症状調査フォーム_3
月経随伴症状調査フォーム_4
月経随伴症状調査フォーム_5
月経随伴症状調査フォーム_6
最後に青江が出てきてなんか聞いてくるのがチャームポイントです*10 。
以下は作成時の細かい話なので、読み飛ばしてもらって大丈夫。
【転載ここから】
えらい! 仕事が早い!
項目
日本語版MDQ (Menstrual Distress Questionnaire)の35項目版を用いた。これが最も少ない項目数だったからである。
月経周辺期における愁訴の変化 -MenstrualDistressQuestionnaireによる変化の追究 一 後藤由佳,奥田博之. 岡山大学 医学部保健学科紀要,16:21-30,200
http://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/1/15180/2016052721264092441/016_1_021_030.pdf
選択肢
4件法「症状なし(0)」「弱い(1)」「中程度(2)」「強い(3)」とした。
月経随伴症状負担感尺度作成の試み 稲吉 玲美. 女性心身医学 J Jp Soc Psychosom Obstet Gynecol Vol. 23, No. 2, pp. 114-122,(2018 年 11 月)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspog/23/2/23_114/_pdf/-char/ja
また,本来はそれぞれの項目における月経前・月経中・月経後の 3 つの時期について,「症状なし(0)」「弱い(1)」「中程度(2)」「強い(3)」の 4 件法にて回顧的に回答を求めるが,本研究では回答者の負担を軽減するため,最も心身の変化を感じると選択した時期についてのみ尋ねた.
5件法、6件法を用いている文献もあった。今回は回答しやすさを考慮して4件法で。あと「強い」の上に「無理」もつけようかと思ったが、「強い」ではなく「無理」を選ぶのは心理的 な状態の影響の方が実際に取りたい症状の強さよりも大きい気がしたのでやめた。
スコアリング
単純に和を取ることとし、カットオフ値は設定しなかった。
考え方
Tanaka E, Momoeda M, Osuga Y, Rossi B, Nomoto K, Hayakawa M, Kokubo K, CY Wang E. Burden of menstrual symptoms in Japanese women – an analysis of medical care-seeking behavior from a survey-based study. Int J Womens Health. 2014;6:11-23https://doi.org/10.2147/IJWH.S52429
Burden of menstrual symptoms in Japanese women – an analysis of | IJWH
The severity of menstrual symptoms was defined by four severity groups, based on a total score distribution of the summed premenstrual and menstrual cycle mMDQ scores: “very strong” (top 10th percentile of the summed score distribution, where the actual range of the summed score was 215 and above), “strong” (top 10th–25th percentile of the score distribution, where the actual range of the summed score was 148–214), “slightly strong” (top 25th–50th percentile of the score distribution, where the actual range of the summed score was 103–147), and “moderate and below” (lower 50th percentile of the score distribution, where the actual range of the summed score was 102 points and less).
とあり、調査に回答した者の中でどの位置にいるかで算出されている。選択肢も決まっていないし、閾値 があるタイプの尺度ではなさそう。他研究を見ても、カットオフ値は設定されず、群間または同群における前後比較が行われている(これとか:https://core.ac.uk/download/pdf/67691668.pdf )。
そのため、カットオフ値は設けなかった。「症状なし(0)」「弱い(1)」「中程度(2)」「強い(3)」にて、カテゴリ別の合計点と、総合計点を算出した。何日か連続で回答し、得点の推移を観察することにする。
実際のスコア付け
Google formの回答用スプレッドシート を作成する。回答が入ってくるシートとは別に、集計用シートを作成する。集計用シートには、各回答(日本語)を数値(0~3)に変換する列、さらに、カテゴリ別の合計値、総計値を算出する。
既存研究のスコア
「月経周辺期における愁訴の変化 -MenstrualDistressQuestionnaireによる変化の追究 一 」より、 22-45歳34名対象の調査から引用。今日の私の回答(月経前)は、行動変化がやや悪く、自律神経・水分貯留は軽かった。*11
月経周辺期における領域別総得点平均値と標準偏差
上図出典:後藤 由佳,奥田 博之 月経周辺期における愁訴の変化 - Menstrual Distress Questionnaireによる変化の追究 - 岡山大学 医学部保健学科紀要 1345-0948 岡山大学 医学部保健学科 2005-12-25 16 1 21-30 https://ci.nii.ac.jp/naid/120002307941/ info:doi/10.18926/15180
今後の意気込み
とにかく何かはしたぞ! という満足感は得ることができた。本来、月経随伴症状のモニタリングは2周期以上続けることで効果を得られるらしい(文献はどっかいった)。さしあたり今回毎日付けてみて、スコアの推移を見たい。
あと、35項目って毎日回答するには多いかもしれない。2周期以上運用した上で、項目の選定を検討してもいいと思われる。私のための調査だし。
【転載ここまで】
それからどうなったのか
フォームに回答すると、こんな感じで結果が収集される。
月経随伴症状調査の回答結果
これをああしてこうして、グラフにする。「生理前」が青、「生理中」が赤。得点が高いほど症状が重い。
月経随伴症状調査の回答結果(グラフ)
ちょっと見づらいかな。「痛み」を例に取る。棒が5本立っている、5日分の記録である。青(生理前)の2日間に比べ、赤(生理中)の方が棒が短い。これは、生理前より生理中の方が、痛みが小さくなったことを示している。
よかったこと:
心身の調子が可視化されることで、自分の体調に対する把握可能感が上がった
青江が気遣ってくれる(ように思える)ので、それだけでなんか救われる
フォームを作って結果を分析するなど、自分で自分をケアしている感がある
今はあんまり使っていないけれど、非常につらくなった時には使って、数字で自分を把握するようにしている。そうすると、なんかちょっと落ち着く。青江がいるし。
転載分が多いとはいえ、長い記事になってしまった……。今日はここまで。次回は何の話をしようかな。短歌の話かな。
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