単品と単品

ハンバーガーとチーズバーガーを食べたいときもある

港灯籠見に遠回り 良かった接客の話

これは2021年アドベントカレンダー「提供」第19日目の記事です。

昨日は私の婦人科的な不調と「女らしさ」の話をしました。非常に個人的で、かつ読んで愉快な記事ではなかったと思いますが、お目通しくださった方はありがとうございました。激励メッセージもありがたく拝読しています。これはやめとこ〜と自衛くださった方もありがとうございます。聡明で勇敢な決断だ。

今日は楽しい話がしたいな。「今年受けて良かった接客」の話をします。

タイトル句は丸亀港の太助灯籠です。よろしくお願いします。(?)

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発句 冬 クチナシの焦げた葉にやる冬の水
脇 雑 ピザの耳からチーズとけだす
三 秋の月 月影よ差せよ血潮の浅きまで
四 雑 港灯籠見に遠回り

その1.鋭い眼鏡屋さん

私のかわいい2本の眼鏡

私は眼鏡を2本持っている。古い方は「おうち用」、新しい方は「労働・お出かけ用」*1。新しい方の眼鏡は「にっかり青江極みたいな色味、かつ聡明そうなやつ」と思って選んだ……と思う。しっかりした作りで、2年くらい使っているが、まだフィット感が落ちない。ありがたい。

古い方の眼鏡は、いつ買ったか忘れちゃったな。だんだんまっすぐ掛けられなくなってきて*2、買い換えたいなあ、できれば「自宅に篭って原稿をやっている人」みたいな眼鏡が欲しいなあ、と思っていた。それでしばらく、べっこうぶちの眼鏡を探していた。

鋭い眼鏡屋さん

ある時立ち寄った眼鏡屋さんで、べっこうぶちべっこうぶち、と試着をしていたら、店員さんが「似た感じで、こちらはいかがでしょうか」って、別のべっこうぶちの眼鏡を出してくださった。すごい。ちゃんと手元を見てお勧めしてくださる。眼鏡をクリーニングしてくれると言うので、青江眼鏡を託した。綺麗になった青江眼鏡をかけ直していたら、店員さんはさらに別の眼鏡をお勧めしてくださった。なんと、青江眼鏡に書かれている産地を見て、同じ土地のもので、べっこうぶち系のものを探してきてくださったのである。す……すごい!

言いたいことと、言うべきこと

別の眼鏡屋さんでは、ひたすらべっこうぶちを試着している私に、最近の入荷品(べっこうぶちではない)をお勧めしてくださる店員さんもいらした。自分が勧めたいものを勧めるべき時もあるし、相手の考えがわかるならば、それに合わせて言うことを変えるべきときもあるのだなあ。私も話す相手の様子に注意深くあろうと思ったのであった。

新しい眼鏡ちゃん

眼鏡は無事決めることができた。残念ながら、鋭い店員さんのいらっしゃるお店が旅先だったのもあって、近所のお店で決めてしまった。だけど、鋭い店員さんのいらっしゃるチェーンは前々から気になってもいて、いつかどこかで使いたい*3

引っ越しもあるし*4、「缶詰原稿女」路線からはちょっと変えて選んだ。青江眼鏡とはまた雰囲気が違う子で、引き取りを楽しみにしている*5

その2.悲しむドラッグストア店員さん

お風呂の洗剤が壊れた。切れた、ではない。スプレーの首がもげてしまったのだ。私が無理な力を加えたせいだったのだが。新しいのを買うためにドラッグストアに行った。入店して気づく。蛍の光が流れている。店員さんが屋外の棚を通路に入れている。閉店間際だったのだ。

「あの、もう閉店ですよね」、と声をかけると、店員さんは棚を押しながらも笑顔で、「商品がお決まりでしたら大丈夫ですよ!」と明るく答えてくださった。ありがたい!「決まってます!」私も勇んで答え、それらしき棚に行く。……見当たらない。見慣れた(今では変わり果てた)形のスプレーがない。焦りで見落としているのか?
さっきの店員さんを探して、「お風呂の洗剤なんですが……」と言う。棚はやはり合っていた。よく見ると、値札はある。だけど、物がない。

「あの、これの本体は……」
「本体、は、ないですね……、今日入荷がなくて……詰め替えならあるんですが」
「いえ、あの、本体がぶっ壊れて……」

私は一体何を言っているんだと、私も思いました。「はい?」って訝しげにされるかもしれない……そう内心で焦った時、しかし店員さんは、「ああー!」と悩ましげに身を捩ったのであった。それで私は、なんだか癒されてしまったのだ。

私もまさかスプレーボトルの首を折るとは思わなかったし、首の部分を強く握って騙し騙し風呂掃除をするのは情けなかったし、平日夜は普段は引きこもっているので買い物に行くだけで大騒ぎなんですけど、でもそのささくれた心が、すっと癒えた。この、(店じまいをしているのにやってきた)客の無念のために、悲しみ、やり切れないと思ってくれたのだ、と思えたから。

私は店員さんに、閉店間際の来店を改めて詫び、対応への感謝を述べ、急ぎ店を出た。またここで買い物しようと思いながら。閉店間際じゃない時に。

感情を肩代わりする

テンパっている時に、自分よりテンパっている人を見ると、落ち着く、ということがある。今回は、悲しみややり切れなさについて、他人が表出してくれると自分の気が楽になるということを改めて知った。割と面白い気づきだ。意識して使えたら便利そうな技である。他人の感情を先回りして肩代わりすることで、相手によい影響をもたらすこと。ちょっと難しそうだけど*6

なお、スプレーは急ぎだったので、別の店で買った。買えてよかった。

その3.丸亀のあったかい人たち

最後に、丸亀の話をする。10月30日(土)〜31日(日)と、ニッカリ青江プレミアムマンス開催中の香川県丸亀市に滞在した。丸亀訪問はこれが4回目*7

丸亀の接客業の人はあったかいなと、毎回思う*8。今年の丸亀旅の遠出メモ*9を、一部改変して引用する。和菓子屋さんと、レンタサイクルの人と、居酒屋の店員さんが出てくる。

遠出メモ

初日に丸亀城に行った後の話。めちゃめちゃ長い。適当に読み飛ばしてください。

寶月堂さんに寄る。外のベンチに審神者たちが座って何か飲んでいる。店内で好きなお菓子をいくつか取ってレジに行くと、「お飲み物は」と聞かれる。わらび餅ラテがあるそうで、沖縄黒糖で注文。いい加減糖分を取らねばならない時間帯であった。助かった。通販使わせてもらってますと言えてよかった。(中略)
ドリンクの待ち時間にガチャガチャを回す。切れてる石灯籠が出る。お店の方が「何出ました?」と聞いてくれて、「切れてる石灯籠が……」と言うと、「なかなか出ないんですよ! いいことありますね!」と言ってくださった*10。あったかいなあ……。
外でわらび餅ラテをいただく。かき混ぜて気づく、あ、これ、和風タピオカってことね。飲んで思いました、わらび餅ラテは天才。おいしい。生き返る。(中略)
体力と気力を回復して、レンタサイクルを返却。横断歩道を渡っていたら「おきゃくさーーん!!」と呼ばれる。お釣りが出るらしい。「帰るときは一声かけてよ〜」と困り笑いしてくれて、ああ、都会と違って、働いている人に感情がある……と静かに感動する。都会、「出してはいけないとされる感情」がとても多いみたいね。丸亀に来るたびに思いますが。謝って、300円を返してもらいました。隣になんでかいたおっちゃんが「ちょっとでも戻ってくれば、なあ」と笑っていた。ああいう人東京で見たらちょっと警戒するもんなあ。(中略)
そんで、駅のセブンでお金をおろしてから、前回(2019年12月)も立ち寄った居酒屋さんへ。今度ニッカリ青江が展示されるときにはまた来ますねと言ったので。大将も、一緒に働いてる若い人たちも変わってなかった。なんか安心する。若大将がニッカリ青江の話を振ってくれたら、隣にいた、なぜかすでにベロベロの*11、いいお年の男性二人組が、「ニッカリ?」「ニッカリ?」と言い、若大将が「ニッカリ」と頷くと、「青江?」「青江?」と言ってて、うわあ、地元のおじさまにも覚えられて……と謎のめでたさと気恥ずかしさが襲ってきた。なんだそりゃ。
大将に「四国はここしか来たことない」と言うと、「都会の人はだいたい四国って言ったら高知に行くよ〜」と笑っていたけど、嬉しそうだった。「夫がいなければ丸亀に住んだと思うんですが……」とお会計の時に言ったら、「いやいや、それだけ丸亀を愛してくれて嬉しいですわ」と言ってくださった。四国は東京よりも貧富の差が少ないので、ギスギスしていない、と言っていた。へえ〜。

ゆるっとした人たち

丸亀の接客男性は、特に、ゆるっとしてる、という感じがする。前に丸亀に来た時に泊まったホテル、丸亀ではない香川県内に泊まったのだが、予約した部屋より大きな部屋を宛てがってくれていた。それ自体は他のホテルでもやってもらったことがある(部屋が空いてる時ね)。しかし香川のフロントの人は、「かわいそうだから、ちょっと大きい部屋にしましょう」とサラッと笑って鍵を出してくれたのだった*12。これはめちゃめちゃ面白かったが、同時に大変衝撃だったので、相殺されてまあまあ適度な音量で「うわーありがとうごさいます!」って言ったと思う*13。同じことをしてくれた東京お茶の水のホテルの受付男性は「どうぞごゆっくりお過ごしください」って微笑んでくれたんだが。

人間味がある。お店の人に感情がある。それは久しく忘れていたことであった。不躾、不快、と思うという人もいるだろうけれど、私には新鮮で、快い体験だった。

私も労働をする中で、相手にとって快い対応ができたらいいなあと思う。相手を良く見て、相手に合わせて*14

 

おお、穏やかな記事に収まった。ありがとう素敵な接客をしてくださった方々。

明日でアドベントカレンダーはほぼおしまいです(例年、25日はまとめ記事です)。いつもお付き合いありがとうございます。

マシュマロ、まだお返事できてなくて恐縮ですが、嬉しく読んでいます。ありがとうございます。最後に、聞きそびれた! ってこととかあればぜひどうぞ。それと、アドベントカレンダーが終わったら、感想くださいって言うと思うので、書けそうな方は素振りしといていただくと嬉しいです。感想強盗。でも読んでくださるだけで十分嬉しいので、年の瀬、無理なさらず(でもいつ感想もらっても嬉しいです)。

 

*1:在宅勤務をしていると、「出勤」「退勤」のけじめがつきにくい。眼鏡を替えることで気分を替えている(スリッパもマグカップも替える)。

*2:私の顔面が歪んでいるのかもしれないが、もしそうなら、青江眼鏡は私の歪みに合わせて歪んでいるということになる。君色に染めようっていうのかい?

*3:OWNDAYSさん。

*4:新たな土地の人に、馴染みやすい印象をもってもらえるといいなあと思いますので……

*5:来年出かけるときには、新しい子をかけていく……かも。

*6:あの店員さんは純粋にいい人だったんだろうなあと思う。

*7:ニッカリ青江脇指を見るのは3回目である。前回の丸亀訪問が青江展示期間外だったため。

*8:あるいは東京の人が冷たいのかもしれないが

*9:後で自分が読み返すための個人的なメモ。旅先でほぼリアルタイムに書く。移動中や、ご飯を待っている間や、宿でゴロゴロしながら。

*10:このガチャガチャは全6種で、切れてる石灯籠は1種しかない。ただ私は前回も早期にこれを当てた。

*11:私は居酒屋さん開店とほぼ同時に入店したのだが、後からいらしたこの二人組はいったいどこで飲んできたのだろう?

*12:部屋の大きさについて、当時のメモ引用:ドア開けたらドアが3つある……! お布団2組敷いてある……! 続きの間もある……! 万歳!

*13:なお、そのホテルの朝食ビュッフェも面白かったので、メモを引用する:朝ごはん会場のお兄さんたちが優しい。丸亀の接客男性みんな穏やかで優しくない? 「ピザ焼けたんですけど、どうですか」ほかほかピザを持ってきてくれる(アドベントカレンダー注:一般的には、「ピザ焼き立てでございます、いかがでしょうか」、とかではなかろうか?)。素朴だ。デニッシュもフレンチトーストも来る。食べる。フレンチトースト甘さ控えめだ。おいしい。
チェックアウトの際のカウンターの男性もダンディかつ柔らかい。「朝食召し上がりました?」「たくさんいただきました!」「素晴らしい!」「ピザも食べました」「それは最高です! またいらしてください〜」という感じ。良い。

*14:接客業の人が感情を出しても大丈夫なのは、接客業の人だけの問題ではなくて、お客さんの器が大きいというかおおらかというか……そういう土地柄なのかなあ。