淀まない――アドベントカレンダー2023

これは2023年アドベントカレンダー「淀まない」第1日目の記事です。

もう12月が来てしまった。早い。過去最高速の夜が明ける。年を取っているので、毎年加速している。これ以上速くなるのかと、ちょっと気が遠くなる。

ハッピーアドベント

うちには梔子の鉢がある。

2020年の5月にお迎えしたものだ。コロナ下で、家の中にいる時間が増えたタイミングで買った。去年の引っ越しにも連れてきた。南国でも、元気に育っている。2020年の記事のサムネイルよりも丈が伸びたし、葉っぱがとても大きくなった。枝が伸びると、その一番下にある葉っぱから黄色くなって落ちるのだと今年気がついた*1。枝が伸びていくと、葉っぱは先の方にまとまるようになって、なんとなく密度が分散した見た目になる。

梔子は初夏に咲く。花芽は花が終わったあと早々につくらしく、その時期を過ぎたら剪定してはいけない。花芽を切ってしまうからだ。私はそれを知らず、今年の年明けにせっせと枝を切ってしまった*2。そのため、この夏は、ひとつも花が咲かなかった。

梔子の花を咲かせられなかったのは2回めだった。2年目の時、鉢をベランダに置いていたら蝶が卵を産んで、孵った幼虫が新芽と花芽を食べてしまった。そのときに齧られた葉がまだ何枚か残っていて、欠けたまま縮尺を大きくしている。それ以来、鉢を外には出さないようにしている。机の上に置くには、大きくなりすぎた。窓辺に置いている。たまにレースのカーテンをめくって、ガラス越しの光を浴びられるようにして。

さて、秋になり、蕾がいくつか大きくなっているのには気がついていた。けれども、1年目にも秋の蕾はあり、多少膨れたけれど、ひとつも咲かずに落ちていたのだった。だから、今年もこれは咲かないだろうと、思っていた。

！ pic.twitter.com/E3dNXAluYa
— ❄ゆあれ (@your_re) 2023年10月23日

ところが、咲いた。これは10月23日のことだ。

梔子の蕾は開く前に透明さを帯びるのだが（白っぽくなるのを、透明感として見ているのだと思う*3）、ある朝、その蕾は"透明"になっていた。ありゃ、咲くんだろうか、と訝しみながら、たっぷりと水をやり、レースのカーテンの向こう側に置いて陽を浴びせておいた。夕方、厚い方のカーテンを閉めようと鉢からレースを避けると、白い花が咲いていた。

その時は、大変驚いた。そして、今朝、もう一輪が咲いていた。

12月だよ、とちょっと笑ってしまう。12月にこの甘い香りを嗅ぐなんて変な感じだ。今年は戻り花が多いと聞く。桜が秋に咲いている、のような。だから私の梔子が咲くのも、異常気象のせいなのだろう。けれども私は、今年の初夏に咲かせてあげられなかった分、花を見せてもらえて嬉しいと感じてしまう。冬だろうと。12月の最初に咲いてくれるなんて、アドベント期間を祝ってくれているみたいだ。

蕾はまだいくつかついている。さすがにもうこれ以上咲くとは期待していないし、開いてほしいとも思わない。咲くなら咲いたっていいけど、十中八九開かずに落ちるだろう。それでいい。私はもう十分見せてもらった。

というわけで、季節外れの梔子の花と一緒に、今年も始めます。アドベントカレンダー。