単品と単品

ハンバーガーとチーズバーガーを食べたいときもある

読んだ:この村にとどまる

マルコ・バルツァーノ 著
関口英子 訳
(新潮社、2024)

 

この村にとどまる (CREST BOOKS) | NDLサーチ | 国立国会図書館

 

途中まで読んで記録しようとした折、国立国会図書館サーチに、この本の評論記事が出てきた。

ebook.shinchosha.co.jp

気に留めていなかったけど、表紙の写真(一面の水があり、水面から、教会の尖塔のような一本の建造物が頭をのぞかせている)が実際の光景なのだとわかった。

しかし村から放たれた言葉に対して、村の外から送り返されるのは、同情的で親身な、言葉でしかなく、それだけでは目の前で進行する工事をとめられない。

「親身な」のあとに打たれた読点の効果、意味に打たれている。

 

この本、戦争の話で、今読むにはちょっと重たいな……と途中で止まっていたのだけれど、やはりもう少し読んでみたいと思う。

 

で、最後まで読んだ。

これは読んでよかった本! 言葉を信じて、言葉を紡ぎ、何度も燃やして……。最後に「言葉ではない表現」が出てくるのがすごくいいなと思った。

(今はもうない)美しい風景や、複雑な感情の描き方も素晴らしいと思う。この本を日本語に訳してもらえて嬉しい。

 

ちょうど台湾の本を読んだので、「A国のために戦ったら、B国の領土になっていた」話がよりしんどく感じられた。

 

いい本だった。

読んだ:三体0 球状閃電

劉慈欣 著
大森望, 光吉さくら, ワンチャイ 訳(2022)

三体0 : 球状閃電 | NDLサーチ | 国立国会図書館

 

今ですか? 今です!

初めての「三体」です。あんなに有名なのに。

後から刊行されたエピソード0から行くのどうなんでしょうね。


途中で兵器開発の話になったり戦争が(急に?)始まったりして読むのがしんどかったけれど、まだ気になる伏線がある……と思ううちに最後まで読んでいた。

情景描写がとても美しい。三国志とか昔の中国の詩が会話文で引用されるのが中国SFだって感じがする。

物理学界隈のところは半分くらいしかわかってないけど、それでも読めたので助かった。


シリーズの他作品のあらすじを見るだに、丁儀という人が大事そうなんだけど、丁儀が出てくるまでに200ページくらいかかっていた(半分くらい)。「超人を呼ばねば」で章が終わったとき、私でさえ「丁儀?」と思ったのだから、過去作を知っている人は「丁儀!」と大盛り上がりするだろうし、ページをめくったら章タイトルが「丁儀」なので舌を巻きました。構成の面白さ、細部の描写の確かさ、どっちもすごい。

私は張彬先生が好きです。疲れ切っている研究者ってセクシーだよね。序盤でこの人絶対球電マニアでしょと思いました。それが明かされるのが早すぎて、この後どんだけ話があるんだよと思った(もちろん、たくさんあった)。


全体的に読むのに体力が必要で、すごく好きな文体というわけでもなく、SFならこの間読んだ「火星の人」の方が好みだったなあという印象。あちらの理屈のところは球電以上にわからなかったけど、語り口がコメディだったからなあ。雰囲気で本を読んでいる説。

読んだ:しゃぼん玉

乃南アサ 著(2004)

しゃぼん玉 | NDLサーチ | 国立国会図書館

 

人からお勧めいただいた本。

携帯電話の描写とか、若者の雰囲気とかから、20年くらい前の本かしらと思ったらちょうど2004年でした。ぴったり。


椎葉には行ったことがないのです。地図を見ると確かに大きい(作中で香川県の三分の一だか四分の一と言われていた。香川県は日本最小の都道府県ですが)。日向市の奥の奥というか、西米良と五ヶ瀬の間なんですね。山深いわ。


たぶん主人公は改心するんだろうなと思いながら読んだり、やってきたのは息子だろうなあとか、ちょっとずつ筋書きを考えながら読むのが楽しかった。最後には「しゃぼん玉」ではなくなるんだろうなあ、とか。

読んだ:わたしの好きな季語

川上弘美 著(2020)

わたしの好きな季語 | NDLサーチ | 国立国会図書館

 

見開きでひとつの季語、それを使った俳句一句、そして川上さんのエッセイという構成の本。春、夏、秋、冬、新年とある。途中にトレーシングペーパーのページが挟まっていて、あるモチーフのイラストが繰り返し印刷されているのだけれど、それはよく見ると表紙にあるイラストなのだった(わかめ?とか)。

デザインがかわいいし、あまり大きくなくて、文字が大きいので、気軽に読める。

最近は自問自答ファッションで自分のことばかり考えているので、こうして他人の感性に触れられるのはとても嬉しい。そら豆のふこふこしたところや、でかいががんぼ、季語で「月」といえば秋の月っていう決めつけにおののく気持ち(慣れると慣れてしまう)とか、私も自分の記憶を引っ張り出して楽しめてよかった。

川上さんのエッセイがまた、ほっこりとあったかくて、とてもいい。歌会で会う人みたいな感覚がある(なんだろう、季節をちゃんと生活している生活者、のような感じ?)


ファンレターが1年に数通という話、川上弘美さんが?と思う……これは数年分の連載を書籍にしたものだから、結構前の話なのかな。でも今は、感想をインターネットに書いたりもするし、作者の方にお手紙を書く人の割合はもっと減っていたりするのかしら。


人の多い場所が苦手で、お子さんの夏休みはお墓参りがレジャーだった話、好きです。いろんな家庭があるねえ。


>せり・なずな 以下省略の粥を炊く 池田政子(p207)

七草を、以下省略! 印象深い句でした。

 

読んだ:刀語. 第1話(絶刀・鉋)

西尾維新 著(2007)

刀語 第1話(絶刀・鉋) (講談社box) | NDLサーチ | 国立国会図書館

 

今ですか? はい、今です。川上さん風に言うなら「刀語フェア(自主企画)」なのです。アニメのOPは昔歌えたはずなんだけど、アニメを見ていたのかどうかもわかんないな。でもなんとなくとがめの「七花!」って呼ぶ声は覚えているような。


西尾さんの本を読むと、三十分くらいは脳内モノローグが西尾文体になる。

 

とがめの奇策一個目(と、思われる)が「惚れてもらう」なの面白いなと思いました。

読んだ:「今の自分」に似合う服

植村美智子 著(2015)

「今の自分」に似合う服 ([天然生活ブックス]) | NDLサーチ | 国立国会図書館

 

ファッション本もう一冊。

 


他人のワードローブを見せてもらうの、ちょっと面白い。


ワードローブのチェック方法は本気で整理したい人には良さそう。

服を全部出す、アイテム別に並べる、全身のコーディネートを作る(靴やカバン含め)、着て写真を撮る、印刷して「好き」「イマイチ」「嫌い」に分ける、それらの理由を言語化する、足りていないアイテムを割り出す、買い物前の下調べをする(雑誌を見る、カフェで人間観察をする、ネット検索など)、予算を考える、買いに行く(試着する・好みの着こなしの店員さんに接客してもらう)、買った服もコーディネートして記録する、季節ごとにワードローブをチェックする。


断服式も年4回。定期的に(割とまめに)手持ちアイテムを総覧するのは大事っぽい。

読んだ:服を買うなら、捨てなさい

地曳いく子 著(2015)

服を買うなら、捨てなさい | NDLサーチ | 国立国会図書館

 

自問自答ファッションではないファッション論も見たくなったため。


本当に似合う服だけを持つことで、周囲からダサい人という烙印を押されなくなるし、自分もハッピー、という考え方みたい。あきやさんとちょっと違うところ。

自分の得意分野を極めればよい。


何でも着こなせるのがおしゃれという呪いがあるという話。私もジーパン一本くらい持ってなきゃと思ってたなあと思いながら読んだ。もう手放したけど。


靴にいちばんお金と愛をかける、という話。バッグより靴の方が身につけている時間が長い。確かに! 履きやすさより履き心地の良さ。靴は自己評価とあきやさんは言い、地曳さんは自分の生き方が出ると言う。本質はかなり近い話かも。

 

 

読んだ:一年3セットの服で生きる : 「制服化」という最高の方法

あきやあさみ 著(幻冬舎、2022)

一年3セットの服で生きる : 「制服化」という最高の方法 | NDLサーチ | 国立国会図書館

 

noteのおすすめ記事に #自問自答ファッション が出てきたのがきっかけで手に取った本(それは筆者のあきやさんの記事ではなくて、自問自答ガールズの記事でした)。

ちょうど先日、2冊めの本が決まったというお知らせがあったところ。おめでたい。

最近私も自問自答ファッションを実践しようとしていて、その話はあちこちに書き散らしてもいるのだけれど*1*2*3、ここでは本について、「ここは!」と思ったところをメモしておきます。

*1:これとかです

*2:インターネットに出す以外にもあって、メゾンガールズのお絵描きがしたくて買ったクロッキー帳と女の子のイラスト指南本が今役立つとは思わなかった。

*3:絵を描くのは楽しい! そういう機会があって嬉しい。そして靴を描くのはとても難しい。

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読んだ:推し短歌入門 = How to Compose Oshi-Tanka

榊原紘 著(左右社、2023)

推し短歌入門 | NDLサーチ | 国立国会図書館

 

ゆにここの推し短歌入門、受講はしていなかったけど気になっていた……! 本で手に取れてほんとうに嬉しい。ありがとうございます。

表紙でわかるけど、いろんなオタクがいるよねというのが、随所のイラストで感じられてとてもいい。自分が二次創作文章書き+たまに観劇という感じなので、それ以外のオタクもいっぱいいるよね……! と手を取って喜びたい気持ちになる。

以下は私のメモ。

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途中まで読んだ:図説台湾の歴史

周, 婉窈 シュウ, エンヨウ
浜島, 敦俊
石川, 豪
中西, 美貴

平凡社、2007)

図説台湾の歴史 | NDLサーチ | 国立国会図書館

 

一時期、台湾旅行に行こうか、という話が人との間で盛り上がった。だけど私って台湾のこと何も知らないなあ……と読んでみた本。15年前の本だったから、もうちょっと最近のにしたらよかったかも……とは思ったけど、古代史とかは参考にしてもいいでしょう。あと、作者が博識なので「ここではそれに深入りできない」みたいな文言を連発しており、逆に信頼感がある。以下はメモ。

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