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部分的に読んだ:かわいいピンクの竜になる

川野芽生 著(左右社、2023)

かわいいピンクの竜になる | NDLサーチ | 国立国会図書館

 

年末に丸の内オアゾ丸善で買い込んだ本の一冊、ようやっと読み切れた。サイン入り本!

作者は歌集『Lilith』の人。初のエッセイ集とのこと。

まずね、装丁が本当にかわいい……! オビが銀色に黒字なんですが、裏面が真っ黒なんです。たぶん黒い紙にシルバーインクなんじゃないかしら。かっけ~。

カバー用紙のイラストももちろんかわいい! カバーを外して全部広げると、ウェーブのかかった紙やドレスのフリル、花びら、そして竜の羽や尻尾がぶわっと広がってめっちゃかっこよくてかわいいです。すてきだ~。背表紙のタイトルが地に寄せてあるのはイラストの邪魔をしないようにだと思うのですが、いいですね。

そしてそして! カバー用紙の手触りもちょっと、微小な凹凸を感じるのですが、表紙用紙が……! 鱗の手触りです!! 竜すぎ!! なんでしょうこれ? 革のシボ感みたいなものを感じます。大ぶりのレースがデザインされているので、レースの細い糸ともオーバーラップしていてすごくすてき。オビが黒、カバーが淡いピンクとブルー、表紙が黒+白のレース、でメリハリがかっこいいです。

ふう。装丁の話しちゃった。

川野さんはロリータ服がとても似合いそうだと思うし、だから着始めたのが割と最近らしいのが驚きだった。失礼ながら……。

「人形は頷かない」という視点がとても印象的だった。人形は抵抗しないかもしれないが、はいとも言わない。審神者だから特にかも。道具はしゃべらないから。

作品と香水、作品とコスメの想像のくだりも楽しく読んだ。作品と、作者の好きなジャンルとのコラボのようなものはとても好き。

海外旅行の章がいちばん好きだ。大好きな物語を追い求める人たちの熱、そういうイベント、大好き。海外のオタクも「息して!!」って言うあたりとか声に出して笑ってしまう。なんか、私は水ピが好きなのもそうだし、「物語が現実に影響を及ぼしている」ところが好きなんだなあと思う。あんスタのリクアワ7で、Switchのバレンタイン曲を聞いた人が片思いの相手に初めてチョコを渡せました、という話で泣いちゃったのも源流は同じではないだろうか。

髪色の話も興味深かった。私もこの間初めて髪をピンクラベンダーにしたのだけど(インナーカラー)、3日で金髪になってしまった。紫は3日でシルバーになった。色を色として保たせるのは本当にすごいことだ。いつ見てもピンク髪の人などは尊敬しちゃう。

あと最終章で私の好きなランジェリーブランドが出てきて、「わあ!」と言って姿勢を正してしまいました。いいですよね……本当に……ものすごくデザインがかわいい。サイズが大きめなので、気に入るかわいいデザインを探すのが本当に大変なのですが、このお店に行けば必ず好きなものが見つかる。しかもサイズがちゃんと合う。嬉しすぎる*1。品物の良さも素晴らしいのだけど、店員さんがまたすごい。お店がどんなに混んでいても、接客が穏やかで丁寧なままなのがすごい。すごすぎてなんとか感謝を伝えるためにお店のインスタにDMしたことがあるくらいすごい。川野さんは「下着のデザインについて語り合える」のように書かれていたので、私も先日「リボンが2色ありますね!!」などとデザインに関する点を振ってみたところ、「そうなんです! この部分もそれに合わせて2色あるんです!」などとお話してくれてとても嬉しかった。きれいなものはいいねえ。

さて、記事タイトルが「部分的に読んだ」なのは、性暴力のくだりをたまに飛ばさせてもらったからなのですが(親切に、そのような描写の前に説明書きをしてくださっている)、大学時代にあった性暴力(セクハラと呼んでもいいんだけど、加害の悪さと被害の大きさを両方矮小化している気がして腹が立つのでこう書く)のことを思い出して暗澹たる気持ちになった。そういった加害者ほど社会で成功していたりするのがまた最悪だ(社会における成功とは何かはとりあえずおいておく)。私が見過ごしてきたことを、川野さんはきちんと見つけて拾い上げて言語化してくれている。それを読むのは心が痛いことでもあるのだけれど、誰かがこうして光を当ててくれているということが嬉しいし、そして自分がこれから同様の状況に立った時があれば(嫌だけど)そこにきちんと疑問を投げかけられるのではないかなと思う。

 

*1:引っ越しで近所になくなってしまったので、東京に行った時にわざわざ立ち寄ったりする。