前提
この記事は7月15日の夜に書き、そのまま寝かせていたものである。17日、ところどころ加筆・削除などして公開する。補足すると、私は風呂に入ったし、エアペーパーも作った。
はしがき
本当は、
本当は2023年上半期振り返りの記事を書きたいし*1、明日開催のWebオンリーのためのエアペーパーを作りたい*2。作りたいのだが、今日の昼間、1時間15分くらい日記を書き続けてわかったこととして、いまの私は私の言葉が渋滞している。膿のように溜まってしまった。これでは私以外の存在の言葉を想像して紡ぐどころではない。
しょうがない。書くべき記事は書けていないけれど、紙の日記は気が済むまで書いてしまったし、他のどこにも適した書き場所がないし、ここで書いてしまうことにする*3。30分くらい書き続けて、そのへんで終わろうと思う*4。
この頃の書きものについて
さっき、読書記録の記事に書いたある一首を読んで、これはあのふたりの話が書けるな! と急に思い*5、月曜から昨日の5日間にわたって7,000字くらいの散文を書いた。
去年7月に短歌を作り始めてから、二次創作の散文が書きにくくなっていた*6。というか、私が書きたい長い話が、なかなか書けなかった。なお、お題を得て短文を書くのはそれなりにできた(140〜3,000字程度)。
そこで、「短歌をやっていると、(ある程度の長さの)散文が書けない」ということなのだろうかと不安に思っていた。しかし、今作文ができているところを見ると、どうもそうではなさそうだ。それはよかった。安心した。最後まで書けてはいないのだけれど、たぶん10,000字くらいで終わりそうだし、そのうち書き終えるだろうと思う*7。
ちなみに、その散文を書いている間、たまに「五七五七七に収めるのが適しているとしか思えない感慨」が浮かんできた。そのたび、テキストファイルの最後尾に短歌がたまに増えている。散文を書くと短歌が同時に収穫できるようになったのかもしれない、この一年間で。なんだその機能。いいけど。面白いから*8。
寂しくないし、早寝早起き
この間このブログの記事に、「一人旅に行った際に、ひとりで眠るのが寂しくて眠れなかった」と書いた。
先日、一週間くらい一人暮らしをする機会があった*9*10。そこで、さびしくて眠れなかったらどうしようと少し心配していたのだけれど、やってみると、全然そんなことはなかった。毎日早起きして、早期始業・早期終業し*11、朝も夕も散歩をして、21時とか22時にはもう眠くなって寝た。そして翌朝は5時台に勝手に目が覚めた。
終わりがわかっている一人暮らしだったからこそ、うまくいったのかもしれない。けれども、久しぶりに――数えたら5年ぶりくらいに一人で暮らしたにしては、私はちゃんと暮らせていたと思う。生活リズムの規則正しさはもちろん、食材は1回の買い物で最終日までにほぼ過不足なく食べきったし、民泊をチェックアウトした後にオーナーさんから「まるで使っていないかのようにきれいです」とお礼のメッセージをいただいたし*12。
というか、私は心配だったのだな。仕事はつつがなくできるのか、初体験の民泊で快適に暮らせるのか、訪問こそ何度もしたけれど暮らしたことのない町で生活ができるのか、とか。緊張とともにひとり暮らし期間は始まって、その緊張がかなりほぐれた頃に終わったのだった。
結論から言えば、事前の心配はすべて杞憂に終わった*13。
仕事
今は仕事用にデスクトップPCを使わせてもらっている。ノートPCメインで働くのは、コロナ禍始まってすぐの頃以来であった。出先でデュアルディスプレイにできるよう、モバイルモニターと、そのモニターアームを買った。持ち運びに手頃な薄型のキーボードも買った*14。あとは、仕事で使っている有線マウス、リストレストとアームレスト、ノートPCを高くする台、とかをスーツケースに詰め込んで持っていった*15。一応モバイルWi-Fiもレンタルして持参した*16。
実際に民泊で仕事をしてみると、レンタルしたWi-Fiがやたらと切れて、実用に堪えなかった(スマホ用としてなら問題なく使えた)。けれども、民泊備え付けのポケットWi-Fiが非常にパワフルで、それで乗り切った。お客さんとzoom会議をしても全く問題なかった。本当に助かった。
心配していたノートPCのトラブルも起きなかったし(ノーパソが壊れたら詰むので、急遽休暇にさせてもらうか、泣く泣く帰宅するしかなかった)、新しく買ったモニターがスタンドから落ちて割れもしなかった*17。
机のサイズはちょっと奥行きが狭かったけれども、それこそ1週間のことだし、キーボードを叩くたびPCスタンドと干渉してモニターがカタカタ揺れても我慢できた。これで私も、インターネット環境さえあれば、ノマドになれることがわかってしまった。すごーい。*18
補遺
せっかく好きな町に行くのに、仕事を休まなかったのか、という意見があるかもしれない。私は「暮らし」がしてみたかった。そこで仕事をしないと「暮らし」にはならない。というわけで、仕事は普通にした。
平日に仕事をしていると、外食くらいしか楽しみがない。遊びに行けるのは週末のみになる。しかし、暮らしをしていると、週末にこなすべき買い出しとか料理とか溜まってる家事とかもあるわけで、結局「バケーション」にはならないのであった。観光地でのワーケーションって、前々から「どうなんだろう(遊ぶ場所に仕事を持ち込んだら楽しめないのでは?)」と思ってはいたが、実際にやってみると、私には向いてないな~と思った。
暮らし
今回、初めて民泊というものを使った。
宿泊先の検討にあたり、まずはキッチンの有無が問題になった。1週間ずっと外食・中食は厳しいので、自炊がしたく、それにはホテルでは困る。ウィークリーマンションも場所やコスト的に検討できなかった。そこで、民泊、を検討した。キッチンがあり、手頃な値段。その町にはいくつかの民泊があり、助かった。
選んだ民泊には、何もかもがあった。家具、家電、消耗品。直前の町で買った化粧水と乳液すら必要なかった、洗面台にちゃんと置いてあったので(後でサイトを確認したら、それらがあることはきちんと書かれていた。ただの私の確認不足である)。まさに、「友達の家を、入れ替わりに借りました」という状態だった。
調味料はなかったので、自炊には「スープカレーの素の汁」とか「レモンチキンのシーズニング」とか、"これさえあれば"系の調合済み味付けグッズを駆使して乗り切った*19。
使ったことのないアイテムも置いてあり、楽しんで過ごした*20。あと、初めてBOTANISTのシャンプーとコンディショナーを使ったのだけれど、まるで知らない女の身体を乗っ取ったかのように髪がいい香りのサラサラになるので、帰ってから自分用に買った(ちょうど使っていたシャンプーが終わる頃で、買い替えを探していた)*21。
あー、30分経ってしまった……。まだ書きたいな。書いてもいいかな。書きましょう*22。
続けます。
町
何度も訪れて、ずっと好きだった町だった。死ぬまでに暮らしてみたいと思っていた。だけど、多分無理だろうなと冷めた気持ちでもいた*23。……という話を、友人にしたところ、「住みたい町があるなら、真剣に検討した方がいいよ」と助言をいただいた。私としては、我ながらこんな突拍子もない夢、という気持ちがなきにしもあらずだったので、真面目に取り合ってもらえて驚き、そして嬉しかった。
で、夫がしばらく出張することになった。
私は一人で、二人暮らしの家に暮らすことが不安だった。それこそ、寂しくて眠れなくて昼夜逆転になるかもしれない。仕事に差し障る。というか、生活が無茶苦茶になる。私は私の生活が無茶苦茶になることを好まない。
そしてすぐに、あれ、私、家にいなくてもよくないか、と思った。
フルリモートワーカーの私は、そもそもが会社から離れた自宅で働き、1年半ほど経つが支障はない。であれば、自宅に居続ける必要もない。それで、「あの町に暮らすのは、今では?」という気持ちになった。
淀まない。今年の目標が背中を押した。淀まない、私は住みたい町に住む。
そういうわけで、私は某、海と山とお城とうどん、そして稀なる破魔の剣をもつ町の民泊を取った。
天候の影響で道中は散々だったが、町での暮らしは毎日穏やかで、楽しかった。
散歩していると、すぐに港に出る。建物の向こうに小さくお城が見える。かわいい形の山も見える。朝6時からうどん屋さんが開いていて、作業着姿の男性たちが「かけ、大」とかさらっと注文してさっさと食べて、出ていく*24。住宅街ですれ違う人は、小さく会釈をしてくれる人が多い*25。スーパーマーケットにはその都道府県か近隣の野菜や果物、魚がひたすら並んでいる。嬉しい。民泊には自治体指定のごみ袋が用意されていたので*26、私は燃やせるごみをごみ捨て場に捨てた。住人気取りである。
遠くに見える未練の炎に、水という名の火を放つ
読み返しながら書き直していたら、1時間20分経っている。おいおい*27。
暮らしてみると、私はその町では暮らすのはあんまり向いてないなと思うに至った。まじかよ。ここまで読んでくれた人はそう思うかもしれないが、私は本当にそう思った*28。
だけどもちろん、町が嫌いになったとか、飽きたとか、そういうことはない。時折訪問して楽しむ町、として、ずっと心にあると思う。
いい思い出だけがある町に、いい思い出だけをまた重ねることができて、本当に幸運に思っている。そして、書きながら、私にとってそこは、あくまでもハレの町であって、ケの町にはならなかった、ということかもしれない。と、今思った。そうだったらいいなと思う。めでたいから。
さて、私はもともとこの町に、未亡人になったら住めるかな、くらいに思っていた。もし私がこのショートステイをやらなかったら、老婆になってからも、「わたしゃ、あの町に、暮らしたかったんじゃあ……」と未練がましく過ごしていたかもしれない。けれども、今試してみたおかげで、そのじめついた未来の可能性は消すことができたと思う*29。めぐり合わせに感謝である。
一人暮らしの弊害
さて、私は一人で暮らして、まったく支障がなかった、というように書いてきた。しかし、後になって、一つ問題があることがわかった。これである。これ、そう、むちゃくちゃ文章を書いているということだ。
一人で暮らすことで、毎日の発見や気分を、声に出す機会が激減した。もはや、なくなった*30。その日の出来事のメモは、普段の遠出と同様に付けてはいたけれど、発声を伴う会話形式ではない。
そうすると、私の中に、私の言葉が溜まっていってしまった。ただでさえ、新しいことばかりの生活だったのである。言いたいことはたくさんある。あるのに、出口がない。降り積もった発見や感情は、言語化される前の言葉として溜まり、膿のように腫れて、私の膜の下で熱をもった。それが爆発したらしくて、1時間15分も日記を書き続け、それに飽き足らず、1時間半もこの記事を書く羽目になっている*31。
すこやかで規則正しい生活ができる。それは私にとってとても大事な根っこの欲求だ。だけれども――私はそれでは飽き足らなくなっていたのだった。適度に喋る相手がいないと、後で困る。この気付きもまた、あのショートステイで得たものだなと、ちょっと情けない笑みを浮かべて、さすがにもう風呂に入ろうと思う*32。
*1:途中まで書いて止まっている。まあ、今年の目標を立てたのが確か1月に入って3週間ほど経った後なので、半期振り返りは来週になってもまあ順当である。ただし、アドベント期間は待ってくれないが。
*2:構想だけがあり、1文字も書けていないし、そのためのファイルすら作れていない。
*3:無印良品だか、その運営会社の良品計画だかは、「これでいい」という品づくりを心がけているらしい。この「で」には、投げやり感ではなく、深い満足感が込められている
*4:フラグだよなあと思いながら書いた。
*5:民泊の風呂場で本を読んでいて、その場で思いついた。なおこれはエアペーパーを書くべき存在とは別の存在である。
*6:エッセイ的なものやtips記事は書けていた。去年のアドベントカレンダーは短歌を始めた後のことである。
*7:10月のイベントの新刊になりそうな話は全然進んでいない。途中まで書いて、なんか違うなとなり、こういう書き方はどうかなと思ったところで止まっている。書き出しが思いつかないとどうにもならないのだが、しっくり来る書き出しが浮かんでいない。こういうときに無理やり書く気持ちにもなれない。
*8:面白いが、便利なのかはよくわからない。この「便利なのか」という疑問の内訳としては、散文の読者が短歌を喜んでくれるのか、という疑いが大きいような気がする。
*9:夫と不仲になったとかではない。
*10:関係ないが、短歌をしていると「夫」を「つま」と呼ぶ慣習に慣れる。
*12:怪異になれたみたいで嬉しかった。
*13:風呂場でアシダカグモと出くわしたことだけが問題だった。幸運にも1回だけのエンカウントで済んだが、それからと言うもの、「この家には、あのクモもいるのだよな……」という気持ちから、帰宅のたびに「ただいま」と言いたくなった。
*14:最近、東京に行くと、だいたい秋葉原のヨドバシカメラで何か買っている。ノイズキャンセリングイヤホンとか。
*15:このスーツケース、こあずまという名前なのですが、たぶん10年くらい使って、この民泊に着く直前にキャスターが壊れてしまった。こあずま、旅における何らかの厄を払ってくれてありがとう……。まだギリギリ転がせる程度の壊れ具合だったので(タイヤの外側が剥がれて一回り小さくなっていた)、帰りは民泊最寄りのヤマトに持ち込んで自宅まで発送した(ヤマトからスーツケースを送ると、スーツケースはダンボールに詰めずに、スーツケース自体をケースとして送られることを知った)。後で新しいスーツケースを探してきます。ありがとうこあずま(これは、一回り大きなスーツケース(赤)を「紅あずま」と呼んでいたことに起因する名(小あずま、もしくは子あずま))。
*16:おお、勝手に一人で進めているような感じで書いていますが、民泊暮らしを決める前に上長に相談し、許可を得ています。
*17:想像力の豊かさ。
*18:一人暮らしの部屋で、PCをカタカタやりながら何度か、「今ここに取り組むべき原稿がないなんて……! 今こそ原稿を集中して進めるにふさわしい状況なのに……!」と心の中で嘆いた。仕事さえなければ、この状況は一人原稿合宿もいいところである。
*19:塩とか醤油とかを買うと、絶対に余って荷物が増えるのが目に見えている。
*20:Aladdin Vaseとか。
*21:しかし、BOTANISTには効能により色々な種類があった。どれがいいのかドラッグストアの店頭でちょっと悩んだ末、民泊にあったのとは違うのを選んだ。でも、いい香りも、サラサラになるのも満足している。また違う女の身体を手に入れた。
*22:ここまでで2,640字ほど書いた。
*23:正確には、「伴侶が私より先に死んだら、ひとりで移住する可能性がある」と思っていた。
*24:この港町には工場が多い。
*25:なお、今自宅がある町では、おはようございます、とか声に出す人の方が多い。見知らぬ人でも。
*26:必ずゴミ捨て場にすべてのゴミを捨てておかなければいけない、ということではなかった。あくまでも長期滞在の人や、なぜかめちゃめちゃ多くゴミが出た人用だと思う。
*27:4,740字。このペースで二次創作小説が書けたらなあとは……思わない、一応。書けないし。
*28:海のすぐ近くで暮らすことに慣れなかったのか、畑や田んぼのない場所が慣れなかったのか、それとも、車社会であるのに徒歩で通したので疲れたのか(それは車があれば解決するのだが)、なんともわからない。
*29:まあ、夢があるのはいいことだと思うので、「じめついた」は悪意のある言い回しだが。
*30:電話とかしろよという向きもあるかもしれない。今私もそれに気づいた。でも、電話、あんまりするタイプではないんだよなあ、我々……。
*31:メゾンの1階左側が、自転車のチェーンが発火しそうな勢いの自転車操業になっている。
*32:6,430文字くらい書いた。