単品と単品

ハンバーガーとチーズバーガーを食べたいときもある

読んだ:桜前線開架宣言 : Born after 1970現代短歌日本代表

山田航 編著

桜前線開架宣言 : Born after 1970現代短歌日本代表 (左右社): 2015|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

 

『はつなつみずうみ分光器』、『あなたのための短歌集』*1と一緒に買った本。

これも、はつなつ〜と同じように、気に入った歌を引いて記録しておきたいのだけれど、メモを取らずに読了してしまった(はつなつ〜よりも、収録されている短歌の数が多い)。いつ丁寧にメモを取れるかわからないので、いったん記録しておく。

名前だけ知っている歌人、歌だけ知っていて誰の歌か知らない歌、そういうピースがたまに嵌まる感じがして面白かった。はつなつ〜でも見た歌人が別の雰囲気で紹介されたりしているのも面白い。発行年の違いによる作品群の違いや、作者の読み取り方の違いだろう。

歌人の名前の横に、選ばれた歌のワンフレーズが抜き出されているのが面白い。自分の歌でやるならどうしようかなという気持ちになる。

今ページをめくって、好きだなと思った歌人の名前をメモとして挙げておく。

  • 大松達知(おおまつ・たつはる):コスモス選者。若山牧水賞受賞歴あり。英語の教員。先生と生徒の歌が面白い(p13 大いなる譲歩のあらん耳ピアスやめて臍ピアスのみする生徒)。
  • 横山未来子(よこやま・みきこ):心の花入会。こ、こういう歌が詠めたら嬉しい、と思う歌が多い。そういう歌を読ませてもらえて嬉しい。歌にある気づきや感慨、その切り取り方、使われる言葉の美しさ、その並びの心地よさ。(p43 首のべて鹿が新芽を噛むときの音ともおもふ名を口にせり)。
  • 光森裕樹(みつもり・ゆうき):前回も挙げたのを覚えているわよ。たくさん読んでも好きだ、嬉しい。自分の中に冷たくて正しい計算機があり、それと対話をしながら歌を紡ぐような歌。この歌がもう存在する世界に住んでいて嬉しい歌、p127の、喫茶より夏を見やれば木の札は「準備中」とふ面をむけをり 、この現象が私はとても好きなので、やられた〜という気持ちと、こんなにきれいにラッピングされていて嬉しい、という気持ちが両方ある。
  • 岡野大嗣(おかの・だいじ):わかるなあっていう気持ちの歌がたくさん。あと、ハムレタスサンドの方ってこの方だったのか、っていうわかりがあった。
  • 木下龍也(きのした・たつや):『あなたのための短歌集』作者。上に挙げた岡野さんと、「何らかの歌詠みたち」というユニットを組んでいる。あなたのための〜で、手紙の返事として(のように)優しい歌をたくさん詠まれていた印象なのだけれど、歌への指定が少ないとダークな内容の歌が多くなる感じで、もともとの歌はこういう雰囲気なのかなと思っていた。この本でたくさん並んでいるのを見ると、現代を生きている人が、ちょっと気になることをがっちり掬い取って定型の歌にしている、そういう感じがする。それとは違う作風の歌だけれど私は今回これに刺されている、p231 「いきますか」「ええ、そろそろ」と雨粒は雲の待合室を出てゆく

結局最初から最後まで読み返してしまった……、こうしてたくさんの歌人の歌を俯瞰させてもらえるのはとてもありがたい。

 

*1:リンクを貼ろうとして、こちらはまだ記録をつけていなかったことがわかった。不覚だ。