土屋文明 著(1986)
新短歌入門 (筑摩書房): 1986|書誌詳細|国立国会図書館サーチ
おすすめ本として見かけたので。土屋文明さんは文アルクラスタの中で実装を待っている人がいる、と理解している*1。
読んでよかった本。歌会で言われることの理解が少し明瞭になったような気がする。同時に、歌が作りにくくなった(笑)自分が少し前に作った歌を手直しするのはちょっと捗ったけど、新しく作る時に、これでいいのかどうしたらいいのか、わかんなくなるな。面白いな。
人の作に対して評を述べているところが参考になる。
「採られなかった歌について考えたほうがいい」みたいなことを言っていて、これは夏井先生が「落選の歌についてノートに落選の理由を考えて記していた。知らないうちにこれが筋力になったのかもしれない」のように書かれていたように思う(うろおぼえ)。やはり「何がよくなかったのか」を見るのは大事だよな(やらねば……)。
辞書を引けばわかることを間違えるな、そんなことを指摘させていたら選者は本論に入る前にへこたれてしまう、のところも恐縮する。すみません、よくさぼって日本語を間違えます。あとこれは別の選者さんが「感情を強く詠われると、読む方は疲れる」とおっしゃっていたのを思い出した。選者も人間であること。
一首に色々な事件を入れすぎない、8分目くらいにしておくこと。まず意味のわかるようにする。ない日本語を作らない。
つらいことや嬉しいことを具体的に描写する(そんなことも書けないようなら歌なんか詠まない方がいい)。
事件報告にならないようにする。これは多分、歌会で聞く「これは誰でも詠める歌で、作者にしか詠めない歌を詠んでほしい」というやつ。新聞記事の切り抜きとか、パンフレットの抜き書きみたいなやつはよくない、らしいとこの本を読んで少し理解が深まったように思う。自分の心が動いた部分に焦点を当てて、心の動きについて詠む。
世界の見方を反省する。
他の人の歌に対してかなり辛口の評もあり、昭和っぽさも感じるけれど、自分の歌でもやるな……というものについては切迫した反省を得られる。良書。