単品と単品

ハンバーガーとチーズバーガーを食べたいときもある

部分的に読んだ:川端康成全集 第26巻 (随筆 1)

川端康成 著

 

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主に横光利一に言及があると聞いた部分のみ。

 

「初秋通信」p68-

横光さんの旅行記の一文を引いてくる川端さん

 

「入京日記」p96-

こうして細かに日記を付けていてくれるからわかる、人々の暮らしぶりや性格のようなものがあり、日記がなければ後の世を生きる私たちには知りようがない。今ちょうどブンゴウメールさんの配信が永井荷風断腸亭日乗』なのもある。私自身、昔の日記を見返すと「こんなことあった?」って笑っちゃうようなことがけっこうある。

ありがたいことだ。

焼海苔ばっかり食べる川端さん。同じ布団で眠って唸っていた石濱くんが翌朝「一睡もしてない」としきりに言うのを『彼のホラなるべし』と書く川端さん(かわいい)。しばらく温泉で過ごしていて、久しぶりに東京に戻ってきたら探してたのと違う銀行に来てしまい『啞然とす。田舎者になりにけるかな。』と書く川端さん(かわいい)。

『十二時目覺むれば風少しをさまりたれど矢張り雨。天を仰ぎ居るうちに、横光に會ひたくなる。意を決して出づ。』とあり、「意を決して」は雨で外出が億劫だったからだろうけど、なんかかわいく見えてしまう。その後人探しになってなかなか見つからず『ガツカリす。』とか『ホトホト困却す。』とか連続している。小説を読んでいるとわからない、ああ作者も生きている、と感じるのが嬉しい。

あと衣笠さんと横光さんと三人で芳仙閣ホテルに泊まったらダブルベッドにもう一つベッドが付属した広間に通される話があり(囲碁をやって横光さんは衣笠さんに二敗、衣笠さんは川端さんに二敗している)、件の『横光と僕同じ床にもぐり込む。ダブルベツドなれど男二人には狭し。彼、蒲團を澤山僕の方に寄越して、他愛なく眠りに落つ。健やかな寝息にてフウフウ僕の頬を吹く。僕それが寒くて眠れず。』とある。横光さん即寝なのなんとなくイメージできるのが面白い……。

 

「秋より冬へ」p108-

利一さんの最初の妻のことを「よい細君」と書いていて胸が暖かくなる。ところで横光さんは川端さんの着物をよく着ていたというのはどういうこと……? 借りてたの?

 

「上京記」p110-

伊豆の湯ヶ島から帰ってきて、東京での家を探すのに、横光さんが同行する話がある。『その歸り横光と里道を行けば果しなし。雨に濡れる。道を間違へしなり。僕氣の毒と思へど、横光は村道の雨の風情*1を愛す。』とあり、ああ……わかる気がする……と思う。

 

「遙か昔」p112

短歌8首。女の人をよく見ている……。観察眼と、美しい言葉と、小説でない形でも伝わってくる。

 

「獨身倶樂部」p135-

友人たちと海に行く話。色々楽しい予定があったけど続々とおじゃんになってしまうくだりが好き。『横光はどこにでもゐる蛾ばかり氣にしてゐた。』とあり、『蛾はどこにでもゐる』から来ているんだろうけど、この、書いたものを覚えていて、ふとそれを引いてくるのがなんとも良い*2

ボートで失踪騒ぎになり、多くの人が行方不明の若い小説家たちを探すのに、本人たちは無事岸に着いて宴会をしていたあたり、かわいい。

 

「私の一日」p197-

文豪たち、行く先々でたまたま知り合いに会いがちじゃない? 人口が少ないから? 行くところが決まってるから? どっちもだな、たぶん。銀座不二家で雑誌を読んでいたら横光さんに肩を叩かれたという話。

 

他にも読んだけど記録が追い付かない。これ手元に持っておきたいな……。