俳句を作る機会があり、ゲーム文アルのりちさんも指輪装備しているし、横光利一さんの俳句をまとめて読みたいと思ったんだ。
調べると、横光利一全集の補巻には俳句が収録されているけれど、入手が難しく、そして高い。
もうひとつ、大分県宇佐市民図書館さんが出している『横光利一句集』を見つけた。以下当該の記事。
幻の『横光利一句集』を出版しました(宇佐市民図書館、2018年12月28日)
こちらの記事に、郵送での購入方法も記載されています。
恐縮ながら、郵送で購入させていただきました。生まれて初めて定額小為替を買った……。
久米正雄と水原秋桜子の序文があったかいなと思って嬉しい。俳句の読み方がいまいちわからないので、解説を付けてくれてありがたい。
同じく序文を書いている高浜虚子は「欧州紀行」で一緒の船に乗って句会をしていた印象が強いけれど、本当にあれしか交流がなかったみたいで、序文に何を書いたらいいのか困っていた。
句は春夏秋冬の他、「欧州の旅」として旅行中のものが別個収められている。嬉しい。俳句の感想がうまく言えないんだけど、好きなやつをいくつか。優しさと観察眼、何かを嬉しいと思う気持ち、が好きなのかもしれない。
初雪や椿の蕾つまみ見る(春、p30)
喜べる人みな桃の咲くを言ふ(春、p58)
秋晴れや松茸来る柚子来る(秋、p114)
愛があるなあと思って読んでうれしい句。
「初雪や」、雪降ったけど蕾は大丈夫かな咲くかなと心配して手が出た感じだろうか。優しさと好奇心とを感じて心があったかくなる。
「喜べる人」は季節の移ろいを喜ぶ気持ち、それを喜ぶ人を喜ぶ気持ち、が現れているのかな。
「秋晴れや」の句とかとてもめでたくて思わず笑顔になっちゃう。
早春や太刀反り立てる部屋の寒(春、p44)
審神者、刀に反応しがち……? それを差し引いても、なんとなく、部屋の空気の張り詰めた感じ、こちらの背筋も伸びるような冷たい感じ、が伝わる気がして好き。「早春」っていつなのかと調べたら立春の頃(2月4日)とのことで、何となく新年の雰囲気を句から感じたんだけどそれは勘違いだった。
なおきごさい歳時記さんは「早春」の例に横光さんの句を引いている。嬉しい。
三月四日 護謨園
鰐怒る上には紅の花鬘(欧州の旅、p160)
三月二十一日 スエズ
まるまると陽を吸ひ落とす砂漠かな(欧州の旅、p170)
いずれも欧州のやつ。「鰐怒る」、鰐が怒っているところ私は見たことがないんだけど、横光さんが「鰐が怒っているな」と思ったところがいいなあと思う。鰐の上の鮮やかな花が異国感があってなお好き。
「まるまると」は「吸ひ落とす」がすごいなあと……日が落ちるのではなくて砂漠が落としているんだと描かれて、その様子が目に浮かぶのがすごい言葉の力だなあと思いました。