前回・前々回の続き。
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横光利一作品集: 全51作品を収録 (青猫出版) Kindle版
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スフィンクス(覚書)
科学的な思考、というものが、つい最近西洋から入ってきたものっぽい、という気づき。私はもうそれを当然のものと思っているけれど。
ゲーム文アルのりちさんが「あなたたちの思想は、私達の国には合わない」と言うのが気になっている、ずっと。
国を愛する人が、国に滅びてほしくないと思うのは自然なようだ。
お子さんを動物園に連れて行って、二人も同時に見ていられないから上の子は諦めて下の子だけ見張っているくだりが性格が出ていて面白い。
静安寺の碑文
エッセイかな。芥川龍之介さんが上海行きを勧めたという話が出てくる。一人で車に乗るなと言われたのに乗って、危ない界隈に運ばれていく横光さん、本当によく無事で帰国されたなと思う。異国の墓場の描写が美しい。
父
小説。両親と男の子が踊を見に行く。男児の感情の描写が具体的で好きだ。
厨房(ちゅうぼう)日記
梶さんの話。梶さんシリーズは他にもあって、横光利一さんモチーフの人物なのかなと思っているけれど、きちんと解説か何かを見たわけではない。一応小説に入るのだろう。
「比叡」でも書いていたけれど、自分の子供があることを、横光さんはよく書かれる。それもお人柄だなあと思う。
犯罪
とても短い小説。鳥が死んでしまう話。優しい人だなあと思う。
鳥
小説。ちょっと「機械」にテイストが通じていて嬉しい。さすが飛行機の描写が秀逸。
七階の運動
映画パプリカを思い出した。ちょっとシュール。百貨店(デパート)って夢のあるところだったんだろうなあ。
ナポレオンと田虫
小説。寝室のシーンの荒々しさが好きだ。
花園の思想
小説。「春は馬車に乗って」同様、最初の妻様との話。入院中から息を引き取られるまで。
もうなんて書いたらいいのかわからないんだけど、とても好きな小説。死と花と吹き上がる水。肺を病んだ人を看取ることを思い出す。
横光さんの、乱闘や混乱を描くときの端的で勁い描写が、愛に向けられること。
榛名
小説。草木の茂る湖の描写が厚く美しい。
火
小説。母と男児がほんとうにうまいなあ……。
比叡
小説。比叡山行きたいなあ……! 子を持つことについての描写がとても印象的だった。子がいる人は子がいない人にそのように思うだろうなあとは思いつつ、お互い様に持っていってくれる態度のおかげで読んでいて苦しくはない。
微笑
小説。読んじゃった……。数学の話ってこれのことね。戦中に書かれたものをろくに読んだことがなかったことに改めて気づく。私には句会の描写も新鮮だった。
これは敗戦が堪えたろう。
碑文
小説。「日輪」ぽいなと思ったら同じ本に収められていたっぽい? 横光さんが描く、人間が滅ぶ話好き。
琵琶湖
エッセイ。夏が好きとのこと。近江行きたい~~~。
冬の女
とても短い小説。横光さんの春推しを勝手に感じて嬉しい。
北京と巴里(覚書)
エッセイ。芥川龍之介の話が出てくる。
街の底
短い小説。なんとなく横光さんが所持金の少ない人を描くのは珍しいような気がする。
マルクスの審判
小説。昔って踏切が手動だったんだ!?
有罪か無罪か、被告人の話を聞いて考える話、志賀直哉になかったっけ……。
と思ったらこんな記事があった。
Meiji Repository: 志賀直哉の影響圏-横光利一の場合-
https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/dspace/bitstream/10291/1166/1/bungeikenkyu_53_36.pdf
第三に「 マルクスの審判」( 大 . 1 2・ 8「 新潮」 )が志賀の「笵の犯罪」( 大2・ 1 0「 白樺」 )を換骨奪胎したものだと指摘し得る。
右に挙げた横光の三作は、彼が「 志賀氏にかぶれすぎてゐた」時期の産物と言ってよい。