単品と単品

ハンバーガーとチーズバーガーを食べたいときもある

箸にも棒にもかからない

これは2022年アドベントカレンダー「勝てない戦をする」第12日目の記事です。

昨日は、小説や短歌を書くときの洗練の話をしました。いちばん思い入れのある部分を削っても、言いたいことのエッセンスが伝わるし、歌がよりよくなるのは、不思議でとてもおもしろいことだと思います。

今日は、うまくできないことの話をします。「勝てない戦をする」ですからね。

根拠のない自信

私はどうしてか、「やったことないけど、うまくできる気がする」という、根拠のない自信をもっていることがある*1

これには、おおまかに二つのパターンがある。

  1. 自分以外の人間(特に、同性・同世代)がやっているのを見たので、私にもできる気がする
  2. 単に「できる」と思っている

例1:同人誌を作る

私にも、同人誌をまだ作ったことがなかった時代があった。何年のことだったか、2016年か17年頃と思われるが、私は知人のお手伝いで文学フリマ東京に行った。売り子さんとして。
その時に立ち寄った、あるスペースの店主さんが印象的だった。写真の美しい紀行文を、きれいな本ですねと言うと、「これは写真をiPhoneで撮りました。本を作るのは、意外と簡単なんですよ。本を作ろう!」というようなことをおっしゃった。最後のは私の捏造かもしれないが*2

それで、「そうか、本、作れるんだ」と思った。すぐに本を作ろうとはならなかったのだけれど、その方が本当に楽しそうにされているので、とても印象に残ったのだった*3

例2-1:オセロ

この間、知人とオセロをした。なんとなく、私はオセロができるような気がしていたが、惨敗した。

ここに石を置いたらどうなるか、先が全然読めないのだ。頭の中で色を塗り直せないし、塗り直した後の全体像も掴めない。そうか、私はオセロが下手なんだな、と、それで学んだ*4

そういえば私は、トランプの神経衰弱も弱かった。どこにその数字があったのかどころか、その数字はもう出たのかどうかすら覚えていられない。それは、弱いわけだ*5

例2-2:短歌

そして、短歌である。

短歌を作るようになってから*6、いくつか短歌の大会に歌稿を送った。そして、箸にも棒にもかからないのだった。短歌って、なんとなく、詠めると思っていたのだけれど、全然そんなことなかった*7

ただ、「審査がおかしいんじゃないか」とは思わない*8。受賞された作品を見ると、たしかに優れていると思うし、私の歌はそこまでではないなと納得できる。もっとうまくなりたいものだ*9

どうしてかよくなる歌

短歌の会の冊子に投稿し始めて、半年ほど経つ。審査などはなくて、送った歌は全部載せてくれるものだ。

先日、担当の方に歌稿を送ったところ、「とてもいい。これまでとは見違えるようだ」とお褒めの言葉をいただいた*10。私は、褒めていただいて嬉しかったので、「やったー!」と言いながら部屋を走り回った(大のおとなが喜びの感情に浸るのはなかなか難しいので、形から入った。楽しかった)のだが、私としては、変わった自覚はなかったのだ。送った歌を眺めてみても、何がどう変わったのか、よくわからなかった*11

そう、その時はわからなかった。けれど、先日届いた冊子を見て、思うところがあった。2ヶ月くらい前の歌を見ると、たしかに、ちょっと違う気がしたのだ。

違いを充分に理解している自信は、まだない。けれど、強いて言葉にするなら、以前は「私が面白いと思ったことを、私が面白いように詠んでいる」状態で、その後は「私が面白いと思ったものを、そのまま詠んでいる」感じ……だろうか……? ああ、やはり全然言い表せていないような気がする。精進しますわ*12

続けるとうまくなる

最初からうまくできることなんて、ないのだろう。うまくできる方が珍しいから、わざわざ「才能」なんて呼ばれるのだ。

ピアノを習っていたときにも、最初は「押して音が出て嬉しい!」という状態だったのが、徐々に「左手と右手で別の動きをすると、音楽が美しい!」になり、「好きな曲が弾けている!」になっていった*13。知らないことには伸びしろしかないものなのだ。

何かを始めて、うまくできない時に、「次にはどうしたらうまくいくだろうか」と自然と考えられるのは、それはそれで一つの才能かもしれない。趣味という才能*14
私にとっては、同人誌制作とか、キャンプとかがそれにあたる(才能とか言うのは気恥ずかしいが……)。

好きなことを続けて、だんだんうまくなっていけるのは、楽しいことだ。最初はうまくできないことに驚いても(当然だから驚かなくていいのだが)、くさらず面白がって続けられることを、いくらか持っておけるとよいなと思う。

 

ううん、ぬるっとした記事になったな~!
自信ありすぎの話をしたので、どこかで、自信なさすぎの話もできたらいいなと思います。恥ずかしくてできないかもしれないけど。

 

絵文字・メッセージありがとうございます……! 嬉しく拝見しています。お気軽にどうぞ。

wavebox.me

*1:一応、原因の推測はしているのだが、恥ずかしいので書かない。関心がある人は推理してみてください。

*2:捏造かもしれない発言を引いておいて恐縮だけれども、この方。今でも文学フリマにも出店されている。私はこの方のbioにある「書き続けています。」が大好き。

*3:そうしてこういう大人になった:ゆあれ on Twitter: "RT @your_re: 本は作ったらできる!! 本は作ったらできる!!!(発狂した囚人が檻を揺らしまくって叫ぶ感じのツイート)" / Twitter

*4:人にコツを教わったので、次回は勝ちたいと思い、CPU相手に練習している。最初はやはり惨敗して、2回めでちょっと差が縮まり、さっき3回めをやってみたら勝った。しかしやはり、先が読めているわけではないので、強くなっているのかはよくわからない。

https://www.afsgames.com/reversi.htm

*5:キャラクタートランプとかにしたら、札に関心を持って、覚えられるのだろうか?

*6:2022年6月か7月くらいから

*7:57577を作ることはできるが、他の人の作品の中でも良いと思われる作品を作るのは難しい。

*8:大包平か?

*9:先日、初めて棒に引っかかって、とても嬉しかった……のだけれど、該当人数が公表されていなくて、全員に授与されているのではないかと多少疑っている。考えすぎかもしれないが、いずれにせよ、もっとバチコンとした(明確に良い)賞をいただけるよう、精進したいものだ。

*10:一部改変しています。

*11:担当の方は、キャンプがよかったのだろうか、と首をひねっていた。

*12:信頼できる先達が、自分の書いたものを継続して見てくださるというのは、本当にありがたく、嬉しいものだと思う。二次創作小説ではそうはいかないのだ。会に所属している間、しっかり教わって、歌の経験値を積みたいなと思う。文芸の力は、あって損がないと思うから。人生にとって。

*13:なお、刀ミュの曲を練習させてもらっていたので、先生と二人きりの防音室に、崎山つばさ他の声が響き渡る状態になっていた。かなり面白かった。

*14:あるいは、「継続する」という才能。