宮沢賢治 著,北川幸比古 責任編集(1996)
永訣の朝 : 宮沢賢治詩集 (岩崎書店): 1996|書誌詳細|国立国会図書館サーチ
どこで読んだのかわからないが知っているフレーズがちょくちょく出てくる。小学校か中学校の教材だったんだろう。習ったからというよりも、ことばの良さで覚えているのだろうなあと思うなど。
p50 生徒諸君に寄せる 抄 断章七
新たな詩人よ
嵐から雲から光から
新たな透明なエネルギーを得て
人と地球にとるべき形を暗示せよ
新たな時代のマルクスよ
これらの盲目な衝動から動く世界を
素晴しく美しい構成に変えよ
諸君はこの颯爽たる
諸君の未来圏から吹いて来る
透明な清潔な風を感じないのか
絶対に読んだことがある。しかも繰り返し(でないとこんなにはっきり覚えていないだろう)。どこで読んだんだろう……?
なんでかわからないけど今読んで思わず書写してしまった。透明で力のあることば。*1
「以下空白」って不可解だ。ぐぐるとこういう記事があった。
今日、ご紹介するのは「生徒諸君に寄せる」です。この作品は1927年に「盛岡中学校校友会雑誌」への寄稿を求められた宮沢賢治が書いたものとされています。
しかし、ついに完成に至らなかったと見られ、その下書きが残っています。これをまとまった形にして世に送り出したのが、朝日新聞の「朝日評論」でした。1946年の4月号において、残されていた下書きを元に、大幅に加筆・修正された形で掲載したのです。
(略)
宮沢賢治が、自ら書いた下書きからどのように推敲するつもりだったのかは、本当のところは分かりません。ただ朝日評論の編集者が、下書きをかなり読み込んで、宮沢賢治の想いを一つの詩にまとめあげたことは、高く評価されてよいと思います(ちゃんと原文も見れるし)。
一説では、当時岩手県に住んでいた詩人の高村光太郎が編集し直したのではないか、とも言われています。確かに、この詩の力強さは高村光太郎の雰囲気に似ているかもしれません。
誰かが編集したものだったのね。それは本当に初めて知った。
あとこれが好きだと思った。
p57 稲作挿話(部分)
(略)
きみのようにさ
吹雪やわずかの仕事のひまで
泣きながら
からだに刻んで行く勉強が
まもなくぐんぐん強い芽を噴いて
どこまでのびるかわからない
それがこれからのあたらしい学問のはじまりなんだ
(略)
桑名江のおかげで農作業関連に触れる時の心持ちが違うぜ。
これを読んでいると『妖怪と小説家』で宮澤先生が「トシが死ねばさぞ美しい詩ができたでしょうね、と」と言うのが思い出される(野梨原花南(2015). 妖怪と小説家 KADOKAWA, p215)。
*1:実際何かの授業で書いたのかもしれない。