単品と単品

ハンバーガーとチーズバーガーを食べたいときもある

「感情と意思」の「意思」の方 ③行動経済学分野の文献を読む

これは2020年アドベントカレンダー「感情と意思」第5日目の記事です。

予定通り、土日はアドベントカレンダーをお休みしています。それなので、今日は12月7日ですが、このアドベントカレンダーは5日目とカウントしています。*1

 

前回は、感情と意思について、認知科学分野の論文を3本読みました。

pinnni.hatenablog.com

 

今日は残りの、行動経済学分野の論文2本を読みます(論文のリストはこちらの記事です)。 

論文の感想

感情と経済行動の意思決定 ―プロスペクト理論と神経経済学からの展望―

竹村 和久, 感情と経済行動の意思決定マーケティングジャーナル, 2015-2016, 35 巻, 4 号, p. 6-26, 公開日 2020/04/21, Online ISSN 2188-1669, Print ISSN 0389-7265https://doi.org/10.7222/marketing.2016.013https://www.jstage.jst.go.jp/article/marketing/35/4/35_2016.013/_article/-char/ja

 

「お店が快適だと購買意欲が増す」のくだり(端折っています)、まあ実感としてわかる。(購買意欲はともかく)イベントでお店出す時には、いらしてくださった方が快適な設営をしたいですねと改めて……。

「ポジティブな気持ちの時に、意思決定のための検討が減る」という話(端折っています)、「めちゃハッピーな時には軽率にイベント参加を申し込んでしまう」とかいうことなんだろうが、面白い。これも直感に合っているが、それをわざわざ誰かが示してくれていることが、良いなあと思う。*2

 

これは論文中に書かれたことではなく私の感想ですが、周りの人をハッピーにできる人は、周りの人が意思決定するに際して「背中を押す」ような働きができるということだろうか。これも直感的にはそうだろうと思われる*3。素敵なことだと思う。 

感情と意思決定

木成 勇介黒川 博文大竹 文雄, 感情と意思決定行動経済学, 2017, 10 巻, Special_issue 号, p. S9-S11, 公開日 2018/04/12, Online ISSN 2185-3568https://doi.org/10.11167/jbef.10.S9https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbef/10/Special_issue/10_S9/_article/-char/ja

 

こちら会議録でした。

 

p9「1. はじめ」最終段落より。上記論文にも書いてあった感じのこと(太字筆者)

分析の結果,過去の実験結果を開示したグループにおいて怒りや嫉妬などで表現される負の感情が分散を低く見積もらせることがわかった.しかし,総じて感情が過去の実 験結果を開示したグループにより強く作用するという結果は得られず,むしろ過去の実験結果を開示したグループにおいても開示していないグループにおいても,喜びや興奮で表現される正の感情が意思決定,具体的には,歩合制よりもトーナメント制での報酬を選択する確率を高めることがわかった.これは,正の感情が期待利得を高めること,楽観性バイアスを発生させること,さらにはリスク許容度を高めることから生じている.

 

主成分分析でちゃんとネガティブ感情とポジティブ感情がちゃんと割れるの面白いな!*4

論文を読んで

論文の「感想」の話

念のためなんですけど、論文を読んでいますが、レビューをしているわけではないので、本当に好き勝手な感想を書いております。前回記事でもそうです。

なので、論文で論じられている方法や考察が妥当かどうかとかいう話はしていません*5。気になったところだけつまんで、へえ~と思ったところだけピックアップして書いています。その際にも、論文に書かれている内容を歪めないように注意しているつもりですが、もし誤読や誤解があったらすみません。そっと教えていただけると幸いです。 marshmallow-qa.com

名前が誰やねんという感じですが、私のマシュマロです*6

 

感情と意思と研究結果

感情が意思決定に与える影響、という論文をいくつか読んできた。

この分野、そもそも感情って何とか、どういうタイプの感情が意思決定に影響するのかとか、そもそも意思決定「が」感情「に」影響するってルートもあるんじゃないのとか、まだまだ錯綜した、エキサイティングな分野みたいです。いいですね。ホットですね。

私が特に面白かったのは、「感情で価値の重みを付けることで無理にでも意思決定をする(私訳)」*7、「ポジティブな気持ちのときに意思決定のための検討が減る(あっさり決めちゃう)(私訳)」*8かなと思います。

あと、研究者の熱意。好き。 

感情と意思は分けられるのか

「感情はホットで意思はクール」、というものの見方は、おそらく誤りなんだろう(このくだりは『学術的には,従来,哲学や心理学,認知科学,法学,経済学などでは認知はクールで感情はホットなものであるという前提で,認知と感情は分離され,主として前者の働きを理性,合理性のメカニズムであるとして理論の構築がなされてきたように見受けられる。ところが,21 世紀の科学は,本論文で後述するように,「認知」と「感情」を同じ脳活動の異なる局面であり,両者は不可分であることを示唆し始めている。』(余語 真夫, 感情と意思決定:構成主義的感情論の視座から, 心理学評論, 2014, 57 巻, 1 号, p. 124-139)を取っている)。

意思には感情が含まれる。感情は意思の影響を受ける。

だから、『感情を楽しみ、意志で決定する』というのは、ある瞬間の私にとって「感情」であるものと、その瞬間の私にとって「意思」であるものを、意図をもって呼び分けたものになる。

 

まあ、それでいいじゃん。

 

と思いますが、感情と意思はたぶん厳密には分けられない相互に関連し合うものだ、ということを忘れずに、続きのアドベントカレンダーを書いていきたいと思います。

 

明日は何の話をしようかな。お店が快適だとお買い物が捗る話が「素敵だ」と思ったので、嬉しいお買い物の話とかしようかな。

 

*1:何でか私は、平日やっていることは週末できず、週末やっていることは平日できない。去年までのアドベントカレンダーは、平日は移動中に書いていた。週末は平日と同じ移動がない。だから週末には書けないのかと思っていた。実際、それもあるだろう。だけど今年は平日にも移動がない。平日のアドベントカレンダーは家のPCで書いている。だから、今年は週末も書けるかな? と思ったのだ。同じ環境があるわけだから。だけど書かなかったわ。週末は週末にしかできないことをやりたい。それらをやっていると、アドベントカレンダーを書いている時間的・心理的余裕はないし、それほどの明晰さもない。

*2:私もハッピーになり軽率に楽しい予定をばかすか入れたい気持ちがある(この論文はそういう話をしているのではないが……)。最近そういう祭りみたいなこと少ないもんな。まあ、仮にイベントに申し込んだとして、今すぐ出せる新刊が都合よく手元に或るわけではなく、「締め切りが……」と後で頭を抱えるのも私なんだが……。

*3:し、思い当たる知人がいる。

*4:この分野ではよく見る光景なのかもしれないが……。さっき主成分分析と因子分析を取り違えて書いていたが、以下では因子分析の話をしています:自分で因子分析した経験がほぼなく、人のを見るばかりなんだけど、因子に名前を付けるの一仕事だよね。自分の研究だったら楽しい作業だろうところ。

*5:そしてそういう批判的な読み方もしていません。だめねえ、と思いますけど、でもこれが私の限界や……。

*6:本記事には全然関係ないが、マシュマロ、以前投げたマシュマロにいただいたご返信が見られるようになっていた! 地味にありがたい(しばしば自分がどなたに何をお送りしたのか忘れる)。

*7:大平 英樹, 感情的意思決定を支える脳と身体の機能的関連, 心理学評論, 2014, 57 巻, 1 号, p. 98-123.

*8:竹村 和久, 感情と経済行動の意思決定, マーケティングジャーナル, 2015-2016, 35 巻, 4 号, p. 6-26.