必ずしも本を一冊丸っと読んだわけではなく、細切れにいくつかのお話を読んだ。記録しておく。ネタバレしている。
蝿 Kindle unlimited
「赤い着物」でもそうだったけど最後にいきなり死んでしまうのでびっくりする。でもこういうの好き。
短編の中で、出てくる人それぞれが生き生き見える。
菊池寛せんせいがお手紙で「君のだけが小説だ」って言った作品*1。
春は馬車に乗って Kindle unlimited
文アル界隈でめっちゃよく見る作品だ。
最初の、早くに亡くなった奥様とのお話。奥様への愛がすごくないですか……。愛がすごいし、愛がすごい暮らしのことをこんなにちゃんと小説にできるってどうなっているんだ。文章がほんとうに美しいと思うし好きだ。どうなってるんだ。奥様のこと大好きなのが伝わってくる。呼吸器に問題のある人に夜つきっきりでいるのは、つきっきりでいる側も不安なのだと思い出す。
骨の行方を気にするのは生前婚姻届を出さなかったからで(奥様の家族に反対されていた)、死後に届を出したらしい。なんて……なんて……。
頭ならびに腹 横光利一作品集: 全51作品を収録 (青猫出版) Kindle版
「石のように黙殺してやろう」のやつ*2。新感覚っぽい言い回しは全編にわたって見られるわけではないみたいだった。人の心情の描き方好き。
欧洲紀行 横光利一作品集: 全51作品を収録 (青猫出版) Kindle版
読み途中。
ヨーロッパへの船旅(帰りは列車)の日記。
よく書くとはよく見ること……としみじみ感じる。俳句が載っていて嬉しい。行ったことのある街が描写されているとものすごく嬉しい。またヨーロッパ行きたいなあ(いつになるやら)。
短い文章でこんなに好きな文章になることある? と何度も思う。
こちらの記事に引用されている文章に『実生活の上で、横光さんほど不器用な人を私は知らない。不器用以上に、無能力と言った方が当たるかも知れない。(そういう横光さんの、パリでの生活を想像するのは辛い。)』(永井龍男)とあり、「欧州紀行」の中で"現地の人にボラれたら税金だと思うようにしている"というようなことを書いてたなと思い出した。一人でよく何カ国も行ったもんだ……。
日輪 日本文学全集〈第29〉横光利一集 (1961年)
読み途中。
ゲーム内台詞「ただ日輪に照らされていたところを~」とか、武器のモチーフとかの元ネタと思われる。
邪馬台国の話って知らなかった。こんなに詳細に古代の話書ける? どうなっているのか? 最初のページに出てきた、泉の水に首飾りの珠が沈むところの描写が美しすぎてもう好き……ってなった。
古すぎる本は漢字が旧字で大変読みにくいということを学んだ。
川端康成三十講 定本 横光利一全集 第十四巻 河出書房新社(1982)p76-77
参考文献で見たので……読みたくて……。
会葬名人って言ってるじゃん! もう言ってるじゃん!!
喜んでいるとき毒舌ってなんだ……。年に10回って、月1回ってほどでもないなみたいな、そういう微妙な加減を感じるんですが、そこを切り分けられる頻度で一緒にいたんですねきっと。
好きなもの、嫌いなもの、どちらもなくて、死ぬまで一度も歌を唄わなそうな……そうですか……そう……。
ついでにいくつか目に入れてしまったので書く。
知人への不満 定本 横光利一全集 第十四巻 河出書房新社(1982)p104
『川端康成の自然を見る眼には自分は感心してゐるものである。だが、彼はあまりはつきり見過ぎてゐる。影まで光りの部分と同じやうに見て了ふ。』
どういうことなの?? 初期の川端康成を読まないといかん……。
編輯注記 定本 横光利一全集 第十四巻 河出書房新社(1982)p63
〆切本に収録されていたやつだ。片目に星が入って書けないってかわいい。
自慢山ほど 定本 横光利一全集 第十四巻 河出書房新社(1982)p29-31
学生時代に文士の野球に参加した時の話。『竹久夢二氏はどこにゐたのかとにかく案外玄人臭い身のこなしで駆け廻つてゐたのを覺えてゐる。』だそうです。夢二さんと同時代なのか。そうか。
記事の最後が『夏だ。涼ませて貰ふこととする。終り。』となっていて本当にかわいい。
全体に、こんなに好きな小説を書く人がいて、随筆がかわいらしくて、まだまだ読んでない話がたくさんあることをただ幸せに思う。
*1:明確なソースを調べられていないが、Web上で複数の言及を見る:https://twitter.com/signbonbon/status/1283348401468260354 https://privatter.net/p/3451693 など
*2:元ネタって言うのかしら