三浦しをん 著
惹かれ合う魂と書物のこと
私は何度もこれを言う。本を読む人には同意してもらえるかもしれない。
本には「読むタイミング」があるということに。
書店で背表紙を目に留める。タイトルが気になった。思い出した、この本、図書館で気になったことがある。その日のように、また棚から出す。表紙を、裏表紙を、ソデのあらすじを読む。目次を読む。
やっぱり気になるなあ。好きそうだな、私が。
でも、今じゃないな。
そういうことってある。
そして、いよいよ「今だ!!」と思った時、それは本当に読むべき時。
魂が書物と惹かれ合っている、そう思っている。
もしくは、魂も言葉で書かれていて、つまり、魂もまた書物なのかも。世界中の書物を集めた図書館がどこかにある。あらゆる本、書かれた本、残った本、失われた本、生者と死者の魂が一緒に並べられた図書館がある。そこに、私の魂もまた収められていて、毎秒変わるその並びの中で、たまたま隣に来た本に惹かれる。
そういうことだと思っている。
そしてこの本。
仏果を得ず
文楽〜〜〜!!!!
ずっと、ずっと気になっていた! 「仏果を得ず」!
なぜなら私は三浦しをん先生が好きだから。だけど、「文楽か、ちょっと渋すぎるかも」と思って毎回棚に戻していた。
今! 今だった! 私はこれを読むべきだった!
それはたぶん、ミュージカル刀剣乱舞で、"show must go on"の精神を知ったから。*1
どんな舞台も一回限り。
今日があるのは奇跡。明日があるのは、もっと奇跡。
そういうことが、肌でわかるような気がするようになったから。
芸のこと、恋のこと、もっと強くなりたいと願うこと。
ああ、私も、もっとうまくなりたい。書くこと、書ききること。それを諦めないでいたい、ずっと、もっと良くなりたいと思っていたい、やめたくない。
解説に「著者もまた、主人公と同じで、文章の世界で闘っている」と書いてあって、そうか、と思いました。芸を磨くこと。人生を傾けること。
三浦しをん先生は本当に、職業の素晴らしさを、生き生きとした人間と彼らの生活とともに描き出すのがお上手。読んでいて幸せのため息が出るね。嬉しいな。