単品と単品

ハンバーガーとチーズバーガーを食べたいときもある

読んだ:仏果を得ず

三浦しをん


https://www.amazon.co.jp/%E4%BB%8F%E6%9E%9C%E3%82%92%E5%BE%97%E3%81%9A-%E5%8F%8C%E8%91%89%E6%96%87%E5%BA%AB-%E4%B8%89%E6%B5%A6-%E3%81%97%E3%82%92%E3%82%93/dp/4575514446

 

惹かれ合う魂と書物のこと

私は何度もこれを言う。本を読む人には同意してもらえるかもしれない。
本には「読むタイミング」があるということに。

書店で背表紙を目に留める。タイトルが気になった。思い出した、この本、図書館で気になったことがある。その日のように、また棚から出す。表紙を、裏表紙を、ソデのあらすじを読む。目次を読む。
やっぱり気になるなあ。好きそうだな、私が。

でも、今じゃないな。

そういうことってある。
そして、いよいよ「今だ!!」と思った時、それは本当に読むべき時。

魂が書物と惹かれ合っている、そう思っている。
もしくは、魂も言葉で書かれていて、つまり、魂もまた書物なのかも。世界中の書物を集めた図書館がどこかにある。あらゆる本、書かれた本、残った本、失われた本、生者と死者の魂が一緒に並べられた図書館がある。そこに、私の魂もまた収められていて、毎秒変わるその並びの中で、たまたま隣に来た本に惹かれる。

そういうことだと思っている。

 

そしてこの本。

仏果を得ず

文楽〜〜〜!!!!


ずっと、ずっと気になっていた! 「仏果を得ず」!
なぜなら私は三浦しをん先生が好きだから。だけど、「文楽か、ちょっと渋すぎるかも」と思って毎回棚に戻していた。

今! 今だった! 私はこれを読むべきだった!

 

それはたぶん、ミュージカル刀剣乱舞で、"show must go on"の精神を知ったから。*1

どんな舞台も一回限り。

今日があるのは奇跡。明日があるのは、もっと奇跡。

そういうことが、肌でわかるような気がするようになったから。

 

芸のこと、恋のこと、もっと強くなりたいと願うこと。

 

ああ、私も、もっとうまくなりたい。書くこと、書ききること。それを諦めないでいたい、ずっと、もっと良くなりたいと思っていたい、やめたくない。

解説に「著者もまた、主人公と同じで、文章の世界で闘っている」と書いてあって、そうか、と思いました。芸を磨くこと。人生を傾けること。

 

三浦しをん先生は本当に、職業の素晴らしさを、生き生きとした人間と彼らの生活とともに描き出すのがお上手。読んでいて幸せのため息が出るね。嬉しいな。

*1:ミュージカル刀剣乱舞では、「阿津賀志山異聞 巴里」公演の最中、パリで役者が体調不良で出られなくなった。「葵咲本紀」では、役者が緊急手術になり、結局最後まで再度板の上に立つことができない。早く回復されるといいなと思います。