新井紀子 著
以前読んだ、以下の記事。
新井紀子さんは、東大に入れるロボットを作る、つまり東京大学の入試問題を解くロボットを作っている研究者。ロボットは文章を「読めない」が、日本の子どもたちは「読めて」いるのか、という話。
私も、上記記事に出ている練習問題を間違えた。「読めていない」ということだ。
そういう経験があって、今回新井さんの本を読んでみた。
印象的だったこと:
- ロボットにできることの限界と可能性を知ることで、人間に残される「仕事」とは何かを考えられる
- ロボットは、数学の問題文に出てくる「赤玉と白玉が入っている袋から、赤玉を2つ取り出し、そのまま……」の「その」が何を指しているのかがわからない。だから問題を解けない
- 人間が当たり前に読めていることには、多くの前提があることが感じられて興味深い
- ある模擬試験で出題された問題を解く中で、東ロボくんはためらいなく900桁の計算をする(なお21の21乗を試験中に計算した受験生もいた)
- 東ロボくんの開発の過程には、各種予備校の模擬試験、講師の先生たちのアドバイスがあった
- 『先日、あるテレビ番組がこの問題を取り上げて、東大の新入生に解いてもらったそうです。正解できたのは、たった52%。ショックでした。東ロボくんのライバルだった東大生はもっと正確に文章が読めると信じたかった。』(p298)開発してきたロボットへの愛を感じて、好きなところ。東大生がそんなに文章を読めないとは驚いてしまう。たしかに東大の入試にそういう問題は出ない……と思うけれど……?
今私がやっている仕事は、AIが発達しても、なくなりにくいだろうとは思う。
でも、AIの進化に伴って社会が変わっていくのは明らかだと思うし、その中で人はどうやって働いて、生きていくのか、子どもは何を学んでどんな心構えをするべきなのか、ちょっと考えるきっかけになった。
新井さんは「子ども」のこと、次の世代の人間たちのことを強く気にかけていらっしゃる。そんな研究者さんがいらっしゃることが心強く、嬉しいと思う。