単品と単品

ハンバーガーとチーズバーガーを食べたいときもある

読んだ:エースナンバー 雲は湧き、光あふれて

須賀しのぶ

 

須賀さんの本を読んだのはこれが初めてだったと思う。

コバルト文庫ばかり読んでいて、須賀さんのお名前は巻末の広告や本屋さんでよく見かけていた。深い青色の背表紙よね。

 

「雲は湧き、光あふれて」、すごく良かった。

 

これが高校野球もので、朗読劇になり知っている2.5の俳優さんが出ていたらしい*1ことくらいは知っていた。好きな作家さんが絶賛されていて、気になってもいた。*2

 

今調べたんですが、タイトル、「まさに野球!」って感じではないけど、夏の青空に映える勢いある入道雲と眩しい光、甲子園の空だ……と思ってたところ、「栄冠は君に輝く 〜全国高等学校野球大会の歌〜」の歌詞の出だしだった。うわーん。これ何回聴いたかわからない。*3

 

なんでこの曲をそんなに聴いていたのかというと、通っていた高校の野球部が(その一時期だけ)強くて、私のクラスも大会の応援に行った(ほとんど強制だった)。

運動嫌いで野球にも興味のなかった私が、まさかの「楽しかった!」と言って帰宅したので、家の人が驚いて「どんなものなのか」と応援に行ってみたところ、みるみるうちに一家で高校野球にハマってしまった。大会の試合だけでなく練習試合まで見に行くし、地元テレビ局で放映された試合は絶対に録画するし、試合の録画は毎晩居間で流されていた。そこで「栄冠は君に輝く」が流れるから、この曲はよく聴いていたのであった。*4*5

 

で、この本。

 

なんでこんなにうまいんだろうと考えたんだけど、なんでだろうね!?

自分がこの間短編集を書いたので*6、短編集を読むとついどんな構成になっているのか見てしまうんだけど、すごく上手。

  • 1話の中で、話が各主人公の目線で豊かに広がりを見せながら進み、最後にはうまくまとまっていく爽快感がある。
  • 各話が連続していて、大きな物語の流れを自分の考えで補いながら楽しむことができる。
  • 各話の書き出しに心を掴まれる。情景描写が巧みだし、心情がきれいにシンクロしていて、読んでいてドキドキする。
  • 高校球児が熱い。

高校球児が熱いんですよ!!

 

ああ、久し振りにすごく爽快な読書体験だった。私はこのシリーズの他の本を読んでほしい。

*1:すでにイベントは終了していますが、こちら。【紀伊國屋サザンシアター】 トライフルエンターテインメントプロデュース 朗読劇「雲は湧き、光あふれて」※本公演は終了しました | 本の「今」がわかる 紀伊國屋書店 荒牧慶彦(舞台・映画刀剣乱舞の山姥切国広、舞台あんさんぶるスターズの朔間凛月など)とか出ていらっしゃった……。

*2:何かの賞を取っていなかったっけ、と思って調べたところ、この本ではなくて須賀さんの別のご著書が直木賞候補になった、ということみたい。須賀しのぶ-直木賞候補作家|直木賞のすべて

*3:しかし、歌詞を見ても最後の「きーみにかがーやーくー♪」しか思い出せない。合掌。

*4:運動好きでない私が野球応援が楽しかったのは、球が飛んだら嬉しいし、うまく拾えたら嬉しいし、長く走れたら嬉しい、みたいな感じで、試合の進行と直感的な良し悪しがわかりやすいからかもしれない。あと、選手によって応援歌が決まっており、歌ったり踊ったりするのが楽しかった。点が入ったら得点の歌もあったし、勝ったら校歌を歌うこともできた。あれ、歌うのが好きな人か?

*5:なお私よりも家族の方が高校野球が好きになるのに時間はかからなかった。部員の保護者でもないのに練習試合に来るので、ついに監督と顔見知りになったらしい。

*6:というか、ただ今絶賛入稿作業中である。