小野不由美 著
これで刊行済みの十二国記シリーズは全部読んだかな?
カバー裏より
己の役割を全うすべく煩悶し、一途に走る名も無き男たちの清廉なる生き様を描く全4編収録。
というわけで、男性ばかりの短編集でした。
丕諸の鳥
なんで工芸品のことこんなに知っててこんなに書けるの?
とてもよかった。大きなイベントの際に、鳥の形の工芸品を飛ばして弓矢で射る催事があり、その鳥を作る人の話。
鳥から鳥を出せばいいのでは? と私も思ったら、数行後に「鳥を出す」ってなっててだよね! と思いました。
いいなあ見たかったなあ。陽子はたぶんあとで本当に一人きりで見せてもらうんだろうなあ。
大きなイベントがなければ技術が絶えてしまうみたいな話、退位と即位の話でも出てくるけど、本当なのね。そんな職人たちを保護するのは権力を持つものたちの仕事なのだなあ。
全然話の筋に関係ないけど青江(せいこう)さんが出てきたのでびっくらこいた。
落照の獄
なんで司法のことこんなに知っててこんなに書けるの??
これは怖かった。死刑が禁じられていた国で、残虐すぎる罪を犯し続けた人を死刑にするか? という話。
法学を学ぶ人は必ずこういうパラドックスを学ぶのだろうけれど大変だな。前例を作ってしまうと未来のことまで幾分か裁くことになるのだろう。
しかし「法を破りまくることで復讐にする」っていう感性はわからないでもなく、なんだか胸が痛い話だった。
青条の蘭
なんでこんなに林業? のこと知っててこんなに書けるの??
これは好き。特定の木が駄目になる病が流行り、山が、ひいては人の暮らしが駄目になると、特効薬を探して奔走する男たちの話。最後には男の手を離れた特効薬が、民の手を渡って王宮に運ばれていくのがすごく良かった。王への希望はこうも強い。
王宮の名前見てもどの国かまだわからない。勉強あるのみ。
風信
なんでこんなに暦と気象? のことよく知っててこんなに書けるの??
暦を作る人たちの話。
はたから見たら変な人だけどやってることはきちんと学者、って好き。
「自分たちに戦はできない、だからできることをするしかない」っていうあたりがとても好きだった。